ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

蝸牛の酔歩に 人生を想えば 奇妙な熱望で 胸が震え出す 鈍間な僕には 正しさも無く 掴まれ急いた 独善の貝殻ぞ 粘液で出逢い 交尾に遊ぶ時 聳える目玉が 僕を憐れんだ 神様の違いに 嫉妬を泣かせ 一口で食んだ 罪深き食塩よ 「マイマイ」

通り雨には 念仏唱えて 冬の死骸を 綺麗に洗う 終電の刻に 独り崩れて 春は隣りで 黙って頷く 君に狼狽え 花を毟った 強がる瞳は 痙攣しだす 偉大な夏が 全て炙れば 僕の病魔も 或いは嘘に 「秋の切望」

あの時は僕も 貴方の一部で 感性は極上な 化粧品だった 言葉の裏には 面影が肥大し 血液の滾りを 特別に変えた 主観の覚醒で 理念と歩めば 貴方は憤慨し 僕を切除した 恋より醜くて 愛より歯痒い 温い舌の先は 今も震えてる 「失呪」

息が弾んだ 少女は胸に 猫の返り血 涎と混ざる 抱く人形を 舐める蛆虫 髪は腐って 焼場の薫り 蠅が集った 湯船に沈み 毎日の事を 肉へと語る ご飯時には お皿へ並ぶ 家族の顔が 団欒を生む 「笑顔の家」

熱帯魚が棲む 魔法の臓器に 少女は恋して 百年を過ぎる 悪魔の庭園で 啜り泣く児は 隠せぬ角だけ 母に哀訴する 偽物を好んだ 道化は化粧に 神の血溶かし 目蓋へ重ねる 無限な断片が 脳内で出逢い 知る詩情こそ 僕のヌードだ 「幻覚の質量」

裸で火照り 頷く少女は 毛皮の熱に 鼻を啜った 過ちの色香 肉食に溺れ 未熟な乳を 宝石で飾る 噛み痕残す 君の好意は 僕を眩ませ 盲目にする 死に化粧も 綺麗ですと 聖者が遠く 魂に告げた 「幼き金星」

草木は才能で 太陽も掴むぞ 腐る根で咲く 僕に気付かず 小鳥は才能で 天国も渡るぞ 片翼を揺する 僕に気付かず 野獣は才能で 英雄も狩るぞ 骨すら惜しむ 僕に気付かず 才能は絶対で 故に判らない 無力な魂の末 僕が闘う訳を 「人間敗北」

琥珀の月が 見護る夢は 青に溺れる 小鳥の文学 その楽園に 愛は無粋で 美しさだけ 素肌を蠢く 醜悪な僕は 不眠の砂で 些細な色に 泪を知った 芽吹く魂に 命は逆しま 遠くで星が 熱を忘れる 「砂海の夜」

飼い主捜して 水子が彷徨う 廃棄の海から 産声も知らず 小さな手足で 這い寄る儘に 郷愁が薫った 洞へ跳び付く 誰もが顰めて 目を逸らす中 無垢な粘度に 思わず微笑む あともう少し あともう少し 涙で満たした 愛しい部屋よ 「還り道」

憂い閻魔に 悪人なれど 美麗な国の 民と違わず 鋭き幸にて 血塗れな顔 責苦は業を 償う御役ぞ 死ぬ陰惨に 非情の傷も 肴と堕ちた 想い出話か 百鬼夜行の 祭を追えば 修羅に赴く 我が足痕よ 「地獄囃子」

化学式ならば 貴方の証明を お伽話ならば 僕には代役を 求め合う夜は 引力に逆らい 捜し合う朝は 蜃気楼で霞む 漫画で学んだ 小規模な愛が 歴史で学んだ 無力感を仰ぐ 出逢いと別れ 臆病者のメス 期待と憐れみ 生贄のワルツ 「ピリオド」

無情なる日 酒を呷れば 害児が唄い 凶徒は語る 死は無人駅 不法を想う 線路の上に 齧った林檎 無明に至り 女を孕ます 井戸一杯の 遺骸が喘ぐ ただ無性に 荒焼く瞳と 悶え苦しむ 正気の頓服 「無痛ナイフ」

子守唄揺れる 煙たい暗がり 青痣に塗れた 寵愛を教わる 快楽の授業に 私は虜となり 春が遅れても 夢中で蕩けた 罰する神様が 言う儘削った 左腕の階段は 何より自慢だ 光彩が差して 近寄る乱暴の 清潔な笑顔に 魔法を失った 「石の裏」

画布の前で 挑む限りは 白い砂漠の 孤独に罹る 一筆が壊す 世界線には 心象の色を 重ね続ける 古くなれば 実存を憂い その亡骸は 怯える程だ 何れ遺れば 創作に成る 絵画の味も 僕の歴史も 「命の画匠」

声と背中に 頭を添えて 一つの影が 石壁で泣く 眩暈を誘う 私の名残が 饒舌過ぎて 口枷となる 君を殺める 或いは壊す その集合も 善の末路だ 復活の日に 私は呪った 君で当然と 信じる羊を 「三日の闇」

調和の装置が 世界を泡立て 路地裏で闇に 終焉と教える 自律する鉄槌 記憶は語らず 運命の糸だけ 小指に結んだ 君は正しさに 造りを依存し その触れ方で 証明が終わる 狭間を知った 僕が微笑めば 其れは無様な 後追い自殺だ 「奇怪な番人」

伝え逃した 僕の想いは 空飛ぶ猫が 巣穴へ運ぶ 君の胸には 安物な硝子 不実で砕き 食後に服す 才気の正体 つまり嗅覚 最適解には 血汐が匂う 恩光の踊る 茶目な脳髄 一晩中かけ 生に蕩ける 「幸せな空壜」

お揃いの恋は 教室を忘れて 通学路に咲く 蜜と口づける 笑わない君の 熱い頬を知り 堪らぬ想いに 少しだけ泣く 隠れ家で二人 魔の鏡へ問う 交差する瞳に 永遠は在るか 片方だけな靴 容赦無い青痣 僕は憎悪から 罪の尾を掴む 「加代の死」

息を呑む程 凍る素肌で 病室の君は 夢に微笑む 語尾の口癖 辛い筈なら 全て喩えて 泡沫を呼ぶ 花瓶が飾る 季節を喜び 君は薫りに 紅痕添える 骨で造りし 神様の匣は 美麗に奏で 朝を忘れた 「ゴメンネ」

心ある法則が 矛盾を覆せど その美しさに 僕は否と下す 気高い数式に 思想は害悪だ 公式の模索に 恩情は悪夢だ 人が神と呼ぶ 学識の敗北に 真理を導ける 本物など無い 僕が求めるは 脳に幽閉した 最も単純なる 一粒の解だけ 「数学シック」

睫毛に残る 柔い貴石が 君の一途を 無言で語る 青い果実に 歯形が二つ 酸い忘却と 秘する戯言 恋は熟さず 生傷だらけ 僕が想えば 其れの反対 東北行きの 線路を歩む 金星だけが 好いと囁く 「銀河の切愛」

仏陀の悲運は 選ばない罪に か弱き僕らが 縋り切った事 宵の晩夏には 蚊取り線香と 見事な花火が 虚心を咎めた 偉大な過ちで 想い直す命は 気遣いを重ね 一言に怯える 俗人が善悪に 事勿れを騙る 不遇に尊き死 至上な蝶の夢 「浅学の奴隷」

旅路を歩く 浮浪者の瞳 眩む天国が 乱反射する 翅に憧れて 涙した心は 雨を招いて 少し優しい 燈に微笑み 闇を慰める 夜風は遠く 太陽と巡る 最果ての恋 無口な末路 全ては君だ 幸せが頷く 「無垢な旅人」

畑に埋まった 数多の屍体を 収穫すべきと 胸が躍る闇夜 少女は怯えて 逃避に叫ぶが 親密となる為 足の腱を刻む 僕の鬱屈には 信仰が介添い 神々しい罪で 拳銃を咥える 清潔で在れば 亡霊扱いの街 崇高な一夜に 産声が響いた 「オールナイトロング」

宇宙の青に 魅入る満月 僕は黙って 幻想を聴く 東京の灯に 眩んで落下 君は微笑み 妖精を呼ぶ 項垂れる花 水を与えず 健気な色に 昂る寵児は 君の悪夢と 僕の病魔が 初恋し合い 地獄で踊る 「最短のキス」

粉雪のせいで 凍えた酸素が 肺を満たせば 綺麗になれる 其れは毒だよ 物知りが語る 美の依存性も 判らない癖に 木漏れ日の中 夢と靡きたい 疑いもせずに 春を誘いたい 熱を費やして 深く化粧する 看取る聴衆の 瞳が非才でも 「体温の頬紅」

昏き魔王を 作曲する為 静寂な死の 俯瞰に至る 肉を嘔吐し 銀髪散らす 文学でさえ 必要なのか 僕の全てを 注いだ旋律 僕の全てを 奪った主題 贄の調べに 命を病めば 産声上げる 気高い沈痛 「凶奏」

戦場訛りの 優しい兄が 便所の隅で 頭を垂れる 冗談として 笑えば善い 俺は確かに 殺した筈で 遺書は一枚 哀しみ二匹 死に急ぐ儘 形見が虚ろ 呪いの病に 嫉妬で狂う 僕の愛した 寝息を返せ 「晩夏の絞殺」

才ある者には 孤独なる雨を 識ある者には 裏切りの花を 或いは狂犬の 石喰らう僕が 不遇な殺意で 躯を震わせる 見下せる程に 幸せが罹る時 時代は賛美し 世界は平伏す それを噛砕き 啜れる為なら 僕の路地裏に 燈など要らぬ 「血獣」