ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

便箋を咥え 後ろ髪結う 上目遣いな 君の蜃気楼 神を煽てて 掴んだ悪夢 醒める前に 君の微笑み 真実でさえ 必要なのか 汗ばむ脳は 君の想い出 淡い恋文に 口紅添えて 悪戯な愛と 君の意地悪 「天国の便り」

脳を這う蟲が 視力を高める 今なら暗号も 見破れる筈だ 頬が酷く痒い 舌も狂ってる 赤い膿を出し 小顔を狙おう 指の色を洗い 美しさを望む 清潔な水道に 学ぶ事は多い 僕は草臥れた 手帖も真っ黒 記録を完結し 君を忘れるよ 「備忘録:loop」

刃桜舞って 女を刻めば 交わす盃の 深まる辛口 土に転がる 赤々な散乱 肴に喰らい 余興に慰む 風が拐えば 惨殺の雪よ 足掻く姿は 舌で蕩ける 鮮血を啜り 天へと育ち 次の春にも 美しきかな 「刃桜の宴」

琥珀よりも 温かい肌に 胸を捧げて 夜を永らう 真珠よりも 柔かい瞳に 映る景色は 苔生す天井 紅玉よりも 甘い言葉に 強く頷けば 肌は色付き 黄金よりも 安い二人に 古い六畳が 恋で軋んだ 「貧しい宝石」

娼婦の屍肉を 口へと含めば 熟れた悲哀の 血の味がする 理想と理性に 悲鳴を乗して 眠れる性癖は 痛いほど滾る 夜の盛り場の 終幕の溜め息 胸の返り血を 聖画と銘打つ 生命の深部で 短剣が震える 其れに射精し 祝福を授けた 「悪魔の混濁」

神が孕ませ 僕は宿った 公衆便所の 奥の個室で 生娘の母は 感謝で狂い 僕の誕生も 涙に崩れた 僕は学んで 物を喩えた 其れに喜び 子供が騒ぐ 今は闇にて 詩篇を綴る 父へと贈る 最後の孤独 「救世の子」

森が鍛えた 罪無き欲で 育ての獣を 黙々と喰う 闇でも薫る 街の香水に 怒りを覚え 鮮肉を撒く 衰弱の影で 青年と逢う 健気に笑い 涙を秘めて 綺麗と囁く 彼を殺せば 私の修羅は 完成される 「野性の業」

諭すほど 淋しくて 君の香を 読み返す 初めてと 泣く僕は 不細工な 恋をする 癖になる その笑顔 護れたら 至情です この夢が 醒める頃 僕は死に 君が喰む 「子豚ラヴ」

サラダ味の恋 灯に集る不良 模範的な混迷 煙草は口約束 陰謀に流行色 可愛いが挨拶 仲良しを発明 俯く顔の禁忌 安堵の為騒ぐ 非難は心中劇 死刑下す退席 匿名的な個性 世代の歪さは 心の病で飾る 現代の作法に 瞳の光は同じ 「若者ブルー」

僕は月となる 君の月となる 無遠慮に点り 暗がりへ誘う 恋人も捜せず 想いも叶えず 雨も朝も憂い 気儘に無力だ 祈る君の肌を 光で透き通す 蝋燭の炎より 値のない灯火 虚弱さを呪い 痩せ細れども 君の心だけは 永遠に見護る 「月の哲学」

闇夜に名医は メスと彷徨い 感性の患部を 切除している 自殺の苦悩も 窃盗の不実も 強姦の我欲も 暴力の悪意も 完璧に刻んで この街を正す 人類は害悪と 診断せぬ為に その実験台で 拷問した僕に 博愛さえ語る 貴方が好きだ 「僕の名医」

解釈の渦へ 躯を投げる 促す分離に 僕を懐古し 全ての理由 全ての秘密 この生涯に 睡る詩情よ 純度を高め 同化を極め 僕は初めて 生に叫んだ 零で遺るは 潰れた頭蓋 屋上の月に 揃った上靴 「紅い概念」

君の手紙は 虫歯の如く 多感な気性 悶え暴れる 僕の返事は 臆病を極め 自傷の台詞 多く捧げる 遠い逢瀬で 言葉は狂う 素肌の熱が 薄まる儘に 不揃いの心 不幸な苦楽 涙は確かに 恋文だった 「半熟な葉書」

壜詰の少女の 凡ゆる角度に 詩情を窺えば 僕の筆は走る 幼子は無垢に 壜を振り回し 少女の苦悶に 笑い声上げる 少女が懐いた 青年は今日も 恋人の情欲を 自由にさせる この孤独すら 芸術品と化し 少女は永遠に 美しく哀しむ 「硝子の壜」

謎々を解かせ 死で支配する 僕の引き金に 淫靡な命乞い 血に塗れては 咀嚼音と踊る 齢八十の娘の 調教の成果よ 酷く世迷えば 原色の夢の中 輪郭が歪んで 罪は免責する 僕は本物だと 重ねて呟けど 重要では無い 最早神にすら 「闇闇ソーダ」

闇に靡く髪 指で梳いて 丸い頭蓋を 優しく掴む 月下美人は 天を目指し 眼窩の肉に 根を広げる 君の愛し方 僕の赦し方 理解した後 独りになる 笑顔だった 涙もあった 其れが何だ 其れが何だ 「月下美人」

透明な眼鏡を 絹布で磨けば 街の淋しさも 克明に映るか 邪魔者の夜も 屈辱的な朝も 確実に見抜き 聢と教えるか 廻りし真実は 全てが悪夢だ 暴いた硝子は 闇の中で煌く 僕は目を閉じ 君を想うけど 雨露の裸眼に 判る筈も無い 「無色眼鏡」

夢に見た灯を 今なお愛しむ 情熱の片隅で 君が歳を取る 貧しい肋骨の 雄弁さに怯む 温い部屋の中 肌は肌を縋る 悪疾のように 古い国を語る 文学の筈だと 僕は詩を苛む 君はただ頷き 僕の胸で眠る 六畳間の恋は 静々と汗ばむ 「ボヘミアの炎」

蝶が好物な生花 監禁した想い人 猛獣の嬉し泣き 僕を殺した寓話 摂理に目を覆い 慕情の甘い夢で 正気を葬れども 軽い方が淋しい 死相が浮ぶ少女 火傷で辿る出生 方程式の天真さ 僕を赦さぬ讃歌 全ての鍵を掛け 局部麻酔の夜に 倖せを証明せど 寒い方が淋しい…

快適な幻を 鼻で啜れば 毎夜ごとに 物語を創る 茜色の嘘は 臆病者の為 紅色の嘘は 胸騒ぎの為 罪多き僕が 舌を増す程 善い偶像と 重宝された 無傷の空虚 美点は無い 真実の陽炎 永遠は無い 「口先の救世」

冥土通りを 右手に進み 死の旋律を 小粋に唄う 鬼や悪魔は 露店を構え 邪悪な心を 安価で捌く 君の凶行が 見事と騒ぎ 僕も記念に 写真を一枚 苦痛は絶景 見蕩れ菩薩 実に愉快な 罪の屠殺場 「死に地獄」

音色の中で 躯は透けて 数多の幻と 踊り続ける 美しい声に 涙を流せば 伴奏に併せ 尻尾が揺ぐ 穿つ転調に 脳は眩んで 響く肋骨は 服従をする 円盤が廻り 動く宇宙よ その真実を 耳で讃える 「音楽創造論」

罪悪で実った 感性の果実を 齧ったら最後 美しさは狂う 争いに微笑み 白痴を慕って 加虐に高鳴り 芸術を気取る 詩情の悪臭を 疑いもせずに 真理は得たと 誇る自惚れよ その足跡には 花は咲かない その信仰には 愛は宿らない 「A」

雲の端に 梯子掛け 遠い朝を 出迎える 風見鶏は 愛しくて 太陽風に 身を曝す 僕と君も 天に落ち 永遠誓い 手を握る 空の入口 宇宙の目 叶う恋も ある筈だ 「杞人の真」

遺影で笑う 幼少の僕は お花が飾り 品格を得る 育った僕は 家族の涙や 友の嘆きに 絶望してる 唯一侮蔑し 睨む少女が その本質に 魂と触れる 残滓の僕は 僕を喪えど 虚ろな祭で 初恋を知る 「光明の葬儀」

放課後ごとに 恐怖に惚れて 花子も太郎も 血が噎せ返る 下駄箱の中は 虚数で満ちて 門限までには 実在を叶える 好きな少女と 嫌いなアイツ 部室で混じり 生物を辞める 青春と称する 虐めに服した 作者の想いを 四字で答えろ 「夕闇学校」

混沌は語る 美しい爆風 銃弾の響き 流れる紅血 僕は殺意だ 英雄の証明愛の残り香仇なす切望 終焉は君へ 同調の埋葬 罰する覚悟 獣の人間性 神は観劇し 降り注ぐ死 萌える疫病 不治の感性 「誰もの聖戦」

水浸しの服 色白な手足 忙しない息 幼い目つき 病弱な温度 薬品の薫り 白を切る声 窮した街灯 逃げる野犬 粘膜の撚糸 傷んだ胎児 古い観覧車 土色の菓子 妖精ホテル 何かの頭蓋 控え目な花 「リリィ」

僕の初号機は 誰も救えない 痛む少女にも 手が届かない 洗濯物の匂い 常夏の涼風に 騒いだ日々も 遠い嘘のよう 苦楽の追憶に 少し誇らしい 神様も精霊も 僕は奪えない 淋しい惑星で 罪を嘆いても 泣く暇はない 死海が波打つ 「ネガの聖書」

気品を失った 鐘の如く哮る 君の喘ぎ声を 聖者は喜んだ 片時も赦さず 片時も愛さず しかし求むる 彼らの姑息さ 石から庇って 罵声に慰めて 死にゆく君へ 僕の口づけを 神話も触れぬ 僕が知る君は 微笑むたびに 泪を流してた 「泣き虫の子」