ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

絶望が名乗る 私は挫折です 夢に色付ける 苦い香料です 希望が名乗る 私は余裕です 楽になる為に 薫る幻影です 本性の遠慮を ただ頷く儘で 贄に語るのは 甘過ぎた物語 別れの繕いは 詩が望まれる それ故に叫ぶ 君らの美しさ 「二羽の来賓」

数え唄には 親の想いが 胸を離れず 秋風そよぐ 紙芝居から 学んだ嘘に 恋の真価が 残響しだす 観覧車では 慕った街が 小さく栄え 孤独にする 革命児なら 腕を広げて 群衆が望む 落鳥となる 「生涯は空色」

路地裏の闇 切ない肉を 猫が咥えて 恋文にする 魔女の囁き 盛る儀式に 錠剤飲めば 彗星が降る 青痣だらけ 愛の記号と 信じる為に 今宵も眠る 夢は嘘吐き 旅人になり 何も恐れず 君を離れる 「小さい詩情」

時が憩う草原 土と雨の薫り 台風は凡てに 恵みを涙する 牛の乳を揉み 馬の毛を整え 芝の露を眺め 君の声を喜ぶ 夜には麦酒で 小さく讃える 六弦を奏でて 神様に恩返し 童心の約束を 手紙へ綴れば 明日は晴天と 疑わずに眠る 「無垢な嵐」

路上の石は 花に恋した 懐く蝶々を 潰せし程に 雨で凍えて 泥に塗れど 君が綺麗で 幸せだった 傍に並べば 想いは太る 健気な夏も 気高い冬も 歳月が何れ 君を奪えば 祝福に隠れ 硬く黙ろう 「路マンス」

寝癖を厭い 真夏の死神 雑巾絞って 火星の炉心 添寝は白け 惨事の宿世 土葬至れど 正義の兆候 頭上で騒ぎ 虚言の冒涜 殉教望めば 記憶の花火 腐乱と競い 天使の手紙 言葉叶えて 悲愴の病室 「ギニー」

仔羊に紛れ 涙する獣よ その本能を 何故苛むか 脳裏を過る 血と罪の味 涎に混じる 暴虐な欲求 十字架の許 真摯だとて 優しい雨に 躯は凍える 不実が痛み 夜毎吼えど 弱る旋律へ 合奏は無い 「痩せた狼」

寒空より憎く 臓物より好む 君の肌触りに 指は震え出す 剃刀が描いた 熱奔る恋文で 瞳の蕩ける儘 丁寧に堕落す 座敷で乱れて 露わな乳房に 肉が焼ける程 噛み痕を残す 必ず地獄だと 息が弾むのを 氷結した唇は 禁忌へと帰す 「温み心中」

お題「誕生日」より。

青果齧って 紅を残せば 幼子の影も 甘く遠のく 膨らむ艶が 成熟を迫る 大人で在れ 相当に知れ 裸で泳いで 還りゆく夢 母の腹には 大海が有り 微睡む暦に 花が散るを 幸いと想う 気丈な君よ 「羊水の柘榴」

駅の歩廊に 備え付くは 僕の受話器 応答求むる 有線な言葉 命の留守電 残り香薫る 正しい記憶 火花が咲く 金属が騒ぐ 乱雑に降り 咽返る時雨 電話は喚く 僕の胸から 遺りし人へ 呼出コール 「呼出コール」

脚本が命ずる 僕の幸福な日 闇雲に背いて 苦難で費やす 憐れな衝動が 月を指差した 死ぬのは一度 生きるも一度 神話が誘えど 君は海に棲む 排ガスを憎み 遭逢も叶わぬ 切なる衝動が 雑踏を睨んだ 殺すのは無限 生かすも無限 「嘆き姫」

善き終末に 正しい声よ 魘されて朝 注意深く夜 輪廻は宇宙 星の慰めに 僕が担った 珊瑚の骨盤 静寂の歳月 生を赦さず 根暗な法則 心が苔生す 褪せる毒素 全て古びて 霊魂だけが 空を滑った 「静物の哲学」

図体が大きく 騒音を鳴らし 乾燥も出来ず 時々停止する 皺々のシャツ 色落ちデニム 臭う下着類に 省エネも遠い されど心から 僕を愛するよ 無垢な性能で 僕を愛するよ 気遣う音声に 情が弱る僕は 野暮な洋服を 熱い涙で汚す 「恋する洗濯機」

黄昏に死ぬ 感覚は薄れ 童心へ返り 喉が安らぐ 茜差す君の 名残を抱え 震える儘に 夢中で祈る 誰彼と訊く 死相に惑い 郷愁が宿り 夜を忘れる 溢れる涙に 痛みを悟り 冷えた躯の 夢が愛しむ 「タソガレ」

観劇ながら 悟った謎に 頁は地獄の 墓穴暴きだ 蛆のご馳走 花の憩い場 描写以上に 幸いは無い 空欄の柩に 答えを導く 咎人の憐れ 無情な天才 炎を放てば 悪書も閉す 隣は無垢に 寝息で笑う 「僕の密室」

遠のく君に 堪らぬ僕が 舌で犯した 卒アル写真 艶めく程に 硬めな笑顔 制服の裾が 僕を狂わす 頭の中では 従順な君よ ほぼ完璧な 時間遡行機 古びた僕は 不細工な儘 君が全てと 未だに信ず 「青春の遺影」

枯れた色など 見ずに済む様 花を愛でぬと 誓った日々よ 煙草の燃え滓 揉み消す為に 火傷を負えば 多少は誇れる 句点代わりの 無言を告げて 童話は終わる ハッとする程 閉じた次元で 絵画を描こう 青い絵の具が 役に立つまで 「ブルース」

君の歯形に 想いは綻び 前歯を重ね 胸が熱する 五線を跨ぐ 温和な夜に 鼻歌以外は 全て余計だ 空の下こそ 君の傍だと 古い哀詩が 静かに囁く 浪漫が癒し 救える儘に 少し眠ろう 巡り逢う為 「テレーゼ」

遺伝子が刻む 完璧な制約は 涙の海を創り 空虚に強いる 魔術は曖昧で 科学は有限で 認知の全てが 正確に非力だ ならば導くぞ 不正の法則を 運命が嗤って 君を奪う前に 一言の告白が 傷も愛すのだ 一片の詩篇が 神も犯すのだ 「創造の体温」

車輪の下で 挽肉が鳴く 眉を顰めて 学校へ急ぐ 白骨の味に 不平は無い 恋人の物と 知った後も 植木鉢には 子種を注ぐ 実る胎児に 識者が喚く 平常な脳は 光景を知る 全て嘘なら 最早神話だ 「惑い涙」

痩せた胸板に か細い腕と腿 貧相を極めて 赤面の僕です 兄様は逞しく 筋肉が焼けた 海原仕込みの 豪胆なのです 乱暴な情火で 屈服に強いて 優しい兄様は 釣果を語るの 兄様の漁船は 日本一だから 帰らぬ故こそ 僕の不浄です 「漁村寓話」

口約束だけ 大切にして 待ち望む程 心は灯るの 私の暖炉は 鮮明に燃え 孤独な人が 夢を吐精す 貴方の物よ 貴方の物よ 優しい夜が 全て嘘でも 幾万の時と 唯一の死を 重ねる愛も 必ず在るわ 「炎の娘」

戒む正論は 脳を滑って 惨禍の一つ 有益とせず 嘘を硬骨に 造形したら 走馬燈すら 愉しき物ぞ 単純は難く 複雑は辛く 深夜に映る 僕の最終回 寝不足な儘 君は至情に 依存し給え 重患の如く 「生存娯楽」

翅が無い虫の 切望の如くに 旋律は怯えて 憂いを重ねる 君の足取りに 僕も声を厭い 揺らぐ二匹は 目頭で惜しむ 暫しこの時を 瞬きする洋灯 せめて最後に 嘘吐きな鍵盤 君と眠るなら 詩で飾る柩に 叶わぬ悪夢が 心音を分てる 「オールド・ワルツ」

屍体画像に 安堵を憶え 通帳の丸で 微笑み溢す 烏の駆除に 執念燃やし 週刊誌の中 欲求を捜す 贅沢と知る 半額の弁当 汚い髪留め 安価な焼酎 されど心は 少女が潜み 皺で隠した 小悪魔な舌 「齢八十六」

悪い夢みたく 金糸雀の君は 僕の為だけに 唄を唄ってた 二枚目の彼は 思想で導いて 君に相応しい 牢獄を捧げた 豊かな想いも 本望を失えば 歪な詩篇ごと 喉を焼き潰せ 慰める夜露に 君は翼を広げ 遠く遠く空へ 愚か者の口笛 「感性の鳥」

太古の神は 逞しき腕で 全てを護り 罰を授けた 気儘に殺し 創詩を嗜む 闘う道理も 平等として 現代の神は か細い声で 不信を畏れ 愛を倣った 口実に従い 正義を赦す 銃弾一個の 衝撃の中で 「神の郷愁」

洗濯機の前 君は泪して 幕閉ず恋に 旋律を譲る 洗剤の薫り 廻っている 赤面の余熱 廻っている もう今以上 憎まぬ為に 僕の叙情の 全てを贈る 閃く写真機 君は綺麗ね あのお伽話 君は綺麗ね 「SFの潮時」

君は遠ざかる 陽炎のように 淡く融ける中 厭でも痛感す 知らぬ言葉で 僕を慰めてる 声は届く前に 逸る嘘と咲く 神様はいない 命も必要ない 僕が記号とし 詩に機能する 目も眩む君に 憧れていたよ 脆い程に強く 本物は残酷だ 「初恋の罰」

僕の恋慕は 結核と近く 患うにつれ 胸を沈める 吐血の味を 大切にして 弱る我欲で 薄く微笑む 泪へ触れた 残像の君は 口づけ残し 死に混濁す 肺で花咲く 紅い悲願よ 見事に蝕み 僕をも貫け 「病垂」