ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

老婆の歯茎が 足首を舐め回す 糞尿を啜って 嘔吐く声が響く 業火は安楽を 灰燼を許さない 濃厚な血の池 味も好くはない 魑魅は騒いで 生首を自慢する 叫喚に欲情し 処女の乳を齧る 美しいと呟く 気が触れた画匠 後を歩く僕は この詩だけ遺す 「軽地獄」

貴方の瞳が欲しい 違わぬ風景を観て お揃いの涙を流し 同じ悪夢を見たい 赤は赤で正しいか 青は青で正しいか 光は光で正しいか 闇は闇で正しいか 健全な瞳で見渡す 星空は心を奪うか 明瞭な瞳で睨んだ 悪意は恐れ慄くか 僕と貴方に必要な その網膜の赤い糸 …

枝を折られた大木は 喪失感を感じるのか 今の僕の心のように その痛みを求めるか 中央線がない此処で 僕は意味も呷れずに 上手に間違える事も 傷つく事も赦せない 君の口癖が悲しくて 僕は耳を塞ぐ為なら 咎人にも成れたのに 想い出は幸せを点す 狂い牢屋で…

黒い上履き 青痣の右頬 吹出物の肌 頼りない胸 屋上は高く 天国望めど 当然足りず 諦めがつく 折れた傘を 乱暴に揮う 勝利の証を 鼻歌にして 校庭は遠く 地獄広がる 死化粧だと 眼鏡を外し 「ブスな身投げ」

殺人鬼の娘は 汗を掻いて眠る 夢は脳で飾り 苦悩を遠ざける 静寂な深海で 魚に餌を与える 愛が続く限り 自らの指を削ぐ 鯨が感謝の為 背中で空に押す 宇宙は広大だ 嬉しくて涙する 乱暴な痛みに 娘は地獄に還る 玩具扱いの朝 父の屍体になる 「サカナの夢」

ははになる グロテスク はながさく グロテスク まわしのみ グロテスク どなりごえ グロテスク むしがとぶ グロテスク はをみがく グロテスク したごころ グロテスク いまのえみ グロテスク 「グロテスク」

先生は狡いです 材料が少し泣く 暗い研究室では 潔癖な夢を観た 酷く醜悪な器に 完璧な魂を与え その純潔を計り 空白を慰むのだ 試験薬の苦さに 材料は人となる 白衣は白を忘れ メスは多く刻む 完成品を観察し 目視する心根は 憎悪と恋が揺ぎ 壊す程に美しい…

照る照る坊主 太陽に微笑み 不随な体躯で 愛を振り撒く 雨が降る日は 異常者となり 日和の為だと 少女を吊った 照る照る坊主 晴れは愉快に 曇りは静かに 束縛に応じる 雨が降るから 全ては狂うと 処刑に刎ねた 頭蓋は想った 「照る照る」

解ってる悪魔 解らない天使 愚かなる僕と 悪趣味な神様 彼らは悪魔で 彼女が天使だ その美感の為 不幸と踊った 静かな罵倒に 神経が腫れる 甘い蜃気楼に 醜悪を重ねる もうこれ以上 何も迷うまい 密室の決意に 神が射精する 「敬虔な拒絶」

憐れな子供は 重力とダンスを 凍った血液に 少しの既視感 上下の揺り篭 地獄と名付けて 焦がれる心を 宙に投げ出す 大丈夫だよと 花言葉を唱える 濃い空は青く 青く青く青く 大切な貴方に 頭蓋を砕く音に 乱反射の太陽 最善な日々よ 「ペチュニアの誓い」

粗雑な美しさは 想い出を駆ける 僕の前を歩いた スカートの気流 肉球を触る為に 橋の下に近寄る 浮浪者が薫りし 鍵っ子の逢引き 馬鹿だねと笑い 廃屋でキスした ザラザラの唇が 何より魅惑的で 歳を取るほどに 胸の穴は増える 羞恥心に隠れて 少年が舌を出す…

爽やかな朝を 悪夢と共に臥せ 忙しい人々は みな死ねと呟く 隣人の噂話で 罪人扱いされて 喧しい老婆は 石を喰えと呟く 時間が丁寧に 奪い続けるから 不実な希望を 忘れたいと呟く 無益な人生が 迷惑させるなら 無能の怪物を 殺したいと呟く 「粗悪な硝子」

肉に抗えぬ 獣の本性が 獲物の味を 愛と重ねる 草原で獲り 牙が欲情し 岩の食卓を 臓物で飾る 鼓動を齧り 涙が溢れて 死の断絶に 胸が痺れる 硬骨は埋め 乾風に弔う 自らも愛し 肉なる為に 「野獣」

約束して小指を落とす 紅を塗り薬指を落とす 眉を撫で中指を落とす 灯を消し親指を落とす 残った人差し指で 神様を指さした 残った人差し指で 悩む眼を貫いた 手の平は掴むのを止めた 生爪らはお洒落を止めた 手の甲は鈍器に変わった もう二度と手は繋げない…

観覧車の中で 耳打ちをする 惜別の形見に 夕闇の契りに 精巧な骨董人形は 不幸と狂信を与え しかし美しいまま 夢のように微笑む 現ずる星々は 僕らを手招く 詩を綴りたい 忘れられない 錆びた安全剃刀は 価値と意味を失い しかし傷つけずに そっと安心してる…

貴方の為だと ベランダ登り 汚れた下着を 咥えて逃げる 魅惑を隠した 無臭な態度も 日々で理解し 本性に善がる 布切れの暴力 体液の絶対性 強気な薫りが 雄を破壊する 貴方に手紙を 赦されたなら 一行添えよう 初恋でしたと 「下着ドロ」

西へ東へ 病気を負って 故郷を想い 花を折る 西へ東へ 猫を捕らえて 黒人の肉を 馳走する 西へ東へ 葬儀場を探し 棺桶に縋る 悪を視る 西へ東へ 出逢えし女の 肉情な詩の 息を嗅ぐ 「西へ東へ」

羞恥心は 雨に溶けずに 球根だけが 腐っていく 我慢の末 花瓶を落とし 平気な顔は 床で潰れる 焦燥感は 情を枯れさせ 臓物の海が 餌付けする 決死の末 生肉を啜れば 美食な舌は 経血に蕩る 「赤涙レトロ」

土を喰む 石を齧る 泥を呑む 愛を吐く 雨を待つ 風を捜す 雪を刈る 愛を焼く 一を去る 三を睨む 十を知る 愛を訊く 君を摘む 僕を殺す 墓を掘る 愛を蒔く 「碌で無し」

病垂に包まり 錠剤を齧って 一葉の恋文を 延々と書き殴る 薬効に涙して 虚言に依存し 疾患に敗れど 貴方が大切だと 全て告白して 返事に縋った 全て切願して 合図を捜した 僕の傍らは炎 苦悶の死顔に 恋文も燃える かの聖者の如く 「病巣の恋文」

死期折々 弱く視る 目蓋の奥 蟻が這う 薄倖な骨 叩きつけ 鏡を砕く 朝の日課 天国薫る 瘴気の中 顔は草花 茫とする 窮地の仲 錆びた石 齧る時は ただ正気 「白い疾患」

鈍感な宇宙人は 愛を躊躇わない 一度だけ選べば 使命感で交配する 種の繁栄を望み 真剣に腰を使い 真顔でその触覚を 最適な部位に刺す 人間こそ難しく 実に理に適わない 恋慕を繰り返せど 寂しい夜に怯える 殴られて愛を知り 恋の為に拒絶する 児殺しが平気…

聖人の頬を 思い切り殴る 肩で息して 瞼は乾かない 簡単なこと 裏切りは咲く 空を仰げど 天啓も降らず 神は存在を 意味付ける為 居ない癖に 無茶をしてる 疑い続けど 時に躊躇えば 真実は十分 信仰に負ける 「崇拝の搦手」