ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

オヤツに食べた洋菓子で 砂漠になった口の中を 罪を背負いし旅人が一人 彷徨いながら歩いている 此処は甘さを知る砂丘 私の甘えで置き去りにした 恋人の味を知るところ 此処は辛さを知る砂丘 私の辛辣な見限りで死んだ 我が子の味を知るところ 此処は苦さを…

私は知っている ビルの生えた草原の陰で 紅い顔した欲望が 鋭い爪で躊躇なく 非力な肉を引き裂いたのを 死神の憂いは 枝ほどに細いその指先で そっと多くの背中を撫でて 化け物らを一人殺すたびに 幾万の犠牲を払う事 甘い言葉は本当は苦い 一人過てば群生も…

貴方の骨が震えている 骨壺の底で震えている 一つ取り出し齧ってみると 乾いた病の石炭の味 お前の「」だ、口づけをせよ 親戚群衆が色を付ける 僕は統合が解れぬように 臆病な猫のまま拒絶する 火葬場の煙で呼吸をすると 匂いの素材に不信するほど 貴方の性…

心臓は遠いと泣いた 僕に蔑ろにされた手 アイドルにもなれずに 傷痕ばかり増えていく 握力を授からずに 今日も林檎を投げている 甘い果汁がハジけた末に ハンケチは存外と優しい 計算高い奴隷になりて 反復される数字を記する 痛みはそれでも平等で 蜂蜜の中…

大嫌いだと 言った少女は 寂しい山に 埋まっている 軽蔑すると 言った識者は 塗られた海に 沈んでいる 信じていると 言ったスケベは 頑固な造機に 砕かれている 愛していたと 言った僕なら 誰かが縊って 明日はゴミの日 「n -1の遺言」

貴方は死ぬる 必ず死ぬる 僕が殺せど 殺さなくとも 誰かが泣いて 誰かが怒鳴る 僕が居ようと 何処に居ずとも 人は恋する 悩んで嘆く 僕が求めど 名を知らずとも 修羅は信じる 修羅は恐れぬ 僕が其れなら 孤独も容易い 「修羅の現世」

薔薇を一輪挿していた 日のよく当たる窓辺の傍に 話しかけても無口な頬や 我が儘に香る魅惑の涙や 触れると傷つく高貴な躰が 何より僕には愛おしかった 貴方に何が許されるのか 貴方は何を喜ぶだろう 散りゆく花びらを見るたびに 僕は貴方と死にたいと願う …

ミンチになった合挽肉を 父と信じて泣く子あり それを捏ねては丸める母に 畏怖と嫌悪を抱きつつ 昨日眺めた昆虫図鑑に 答えは全て載ってると知り 形は人間の自らの生態に 疑問を持つのも止められない 父の焼ける匂いがする 馨しき肉食の起爆剤 生命の歓喜、…

空腹の中見渡せば 歩く野菜に 笑う生肉や 眠った魚たちが映ってる 涎を流していれば 街はサラダボウル バスは蒸し器で 道路はフライパンの上 ――私、貴方の我慢を知ってる ――眠る前に私を見つめる涙も ――だから私の肉も骨も内臓も ――私は貴方に赦そうと思うの…

鏡を割って 逆さまの自分を 引きずり出して 殺したい 鏡の欠片で 喉を切り裂く 絶命するまで 執拗に あの子が落とす 手鏡さえも 割れたら奴らが 手を招く 鏡を割って 逆さまの自分に 殺された人の 墓は無い 「鏡人」

流せなかった涙の数だけ 空が、海が、風がある 例えば地平線まで紅く焼けて 塩分の強い波が寄せる 躰を冷やす酸素に触れたら 僕の歯牙の鳴る音が響く 空は空のつもりで覆い 海は海のつもりで満たし 風は風のつもりで旅に出る ならば僕は何のつもりか 纏まっ…

私の下着の薔薇の刺繍 棘があるから気を付けて 不貞な男はその毒を知り 負け惜しんでは直ぐ逃げる 恋なんてしないと決めていた 私はセーラー服の最終兵器 羊水で煮た無精卵を切り分け 齧れば懐かしき母親の味 裸のままで月の海を泳ぎたい 小さな膨らみは新鮮…

春の陽気が楽しげに この子を貰うと声かける 僕は言葉を震わせて まだまだ早いと窘める 幸福模様の太陽や 笑顔ふりまく花々に 完璧な魂が欲しいからと 春風は得意げに語り出す 僕は失い慣れているから 悲しみさえも容易いと言う 結局絵本の続きをせがむよう…

世界の終わりの丘の上 赤子を抱いた母がいる 街を飲み込む洪水の 少しの猶予に恵まれて その柔らかい悲しみで 泣いた赤子に頬寄せて ただ穏やかに微笑めば 時間の全てに愛おしい 希望になんて縛られず 幸せなどに加担せず 終焉の時に狼狽もせず ただ丁寧に愛…

前歯で殺し 奥歯で乏し 八重歯で離れ 親知らずは寂しがる 肉は塩漬けにし 芋はぶつ切りにし 魚は骨を砕いて 草は恋をしている ワインは赤面し 麦酒は嘔吐し ウヰスキーは黙り ソーダ水は諦める 彼は目を潰され 彼女は爪を剥がれ 貴方は犯されて 僕は夢を見て…

浮世は眩しく 時間は硬く 有限ゆえの 貴方の地獄 言葉少なく 瞳が語る 手を伸ばすのは 土竜の心 花の区別も つかない僕を 愛す貴方の 無駄なき骨身 日に日に枯れて 日に日に失せて ついに知るのは 聖なる寝息 「地獄に咲く花」

長く握った手すりから 指の体温は奪われる 貴方がいない真実に 価値を失い遊ばせる ごめんなさい ありがとう でもさようなら 遍く人を押しのけて 自動ドアは僕に気づく 重い空気は雨を呼び 大地に色めく花が咲く ごめんなさい ありがとう でもさようなら 帰…

若き紫煙が肺を満たし 萌芽するは地獄の花か 吐き出す諦観は当てもなく 宇宙の風に散らされる そして旅に出る段取りに 誰もが一片の憎しみを持つ 誕生における副産物が 世界の熱量を僅かに刈り取る 祈り程よく雲にもなれず 願い程よく雨を降らせず 蒸留され…

世界に倹約な神様よ この臆病で丈夫な僕に 失う勇気と傷つく覚悟と 信じる理由と生きゆく口実を 下さい。下さい。下さい。 僕の手が憎しみに染まるなら 或いは突然過ぎたなら こんなにも日々が痩せることはなく まるで今は広がる砂漠のように 静かに駄目にな…

どうにか花びら散る前に 桜の木の下に埋まった死体を 眺めてやろうと思ったのだ 色濃い花を咲かせるものは 沢山の血を吸い上げている 根元を掘るなどの下品はしない 彼らはじきに這い出てくるぞ 木枝に首を括った白骨たちは 埋もれる事なき臆病者で 春一番に…

眩むあの頃に戻りたい カセットテープは絡まって 今の瞬間に僕は残される 千切れる時を待ちながら 傷つけた若過ぎる少女に 次は愛さず近づくまいと 二度も過つ僕ではないと この蜘蛛の糸に信じてる 黒いテープを掴んだら 一気に外へと引き伸ばす そんな勇気…

春の唄を唄ってる 人食い共めと唄ってる ケロイド状の色欲が 腐りはじめる土の中 春の唄を唄ってる 迷惑共めと唄ってる 青き空が落ちてきて 罪無き者の脳を打つ 春の思想で伸びやかに 醜悪な色の花が咲く 摘んでコップに添えたなら 生血が溢れて気に触れる …

貴方と逢わず 僕は一人で 貴方を知らず 正しく歩けば 理想の世界で 胸を焼かれて 幸せの風で 喉は枯れてく 貴方が嫌い 言葉を濁す 貴方が憎い 硝子を落とす やり直したい 心は混血 貴方の無垢さで 許せぬことも 「平和は要らない」

奇跡は音を立てず 痛みに色は見えず 貴方と出逢った事に 矛盾なんて無かった 寝息に口づけて 泣いた彗星の夜 美しいのを教えたい 祈る誠意を信じたい 貴方の首筋に触れて 戸惑いと罪悪を知る 指は僕を放棄して ポプラの枝へと育ってく 針の無い時計が恐ろし…

貴方と愛する論争に 私は歯を立て懸命だけど 貴方は難しい事を言う 私の知らない言葉で語る 貴方にとっての愛情は 崇高で万有な生贄で 私を抱いて眠った男の その汗にさえ美観を求める 新品の心を持つ貴方では 私の直感を認めてくれない 理論で恋を責めない…

僕が車椅子になったなら 日蔭に貴方の背を押して 血潮の透ける命が曇らぬ 小道を寄り添い生きようか 後ろを押すのはどなた様 この急傾斜の手前では 貴方の清らかな絶望が 車輪の芯まで伝わってくる 僕は自殺の道具でなくて 憂慮を知らせる凶器です なので貴…

詠み人知らず、作者不詳 そんな類の忘れ物に 僕が惹かれてしまうのは 幼く清く物知らぬ頃 母から聞いたお伽噺に 宿って離さぬ情念たちが ある種のリアリズムを持って 或いは実在し得る亡霊のように 僕の胸に溶け残るからである 僕の言葉は僕に帰納するが 彼…

野兎を喰らった狼は 愛とは野生と理解して 吠えて吠えてまた吠えて 闇夜に朝日を灯してる カマキリ程の本能に 何より憧れ嫌悪する 口の中の血の味は 舌を這いずりよいお味 ――怖い夢を見たの ――あの人が死ぬ夢 ――丸飲みにすら許せず ――味わい尽くす夢 狼は月…