ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

二人の旅路は 盗んだ銀貨と 騒ぐ排気音が 愉快に毒づく 写真の中でも 不機嫌な少女 三日月に上り 洋服を着飾る 偽物の聖書で 微笑む詐欺師 命が危ぶめば 恋文に偲んだ 遠い地平線を また走る為に 投げた帽子の 照れ屋な幸福 「リアルロング」

女子高生は 刀剣で斬り 僕の希望を 肉に変える 女子高生は 小銃撃って 僕の未練に 穴を空ける 女子高生は 細菌を撒き 僕の言葉が 毒で枯れる 女子高生は 原爆落とし 僕の理想も 罪が満ちる 「反抗期」

君は強いから 終末を恐れぬ 窓辺の光景も 懸命に憶えて 赤い街の中で 讃歌が響けど 神託に逆らい 剃刀を掲げる 僕は弱いから 日常を赦せぬ 大罪の帰結も 頑なに信じて 青い空の淵で 哲学が死ねば 平穏に傷つき 万物を滅する 「天の狭間」

君のお陰で 僕を殺せた 理想な瞳は 鏡に消えた 機関狂って 火花が奔る 写真の中で 愛を唱える 痛む自信を 泪で撫でた 私欲な嵐に 熱が潰えた 地下鉄騒ぐ 幻視に黙る 死霊の底へ 躯は落ちる 「庭付き」

深層で咲いた 七束の向日葵 気紛れな輪郭 照り返す存在 右頬を撫でた 真夏の置手紙 強がりな憂愁 退化する太陽 氷菓が蕩けた 退廃の讃美歌 我が儘な体温 呼び戻す疾病 目蓋に萌した 愛慕の蜃気楼 理屈屋な真実 肥大する切望 「死恋の季節」

葡萄の園で 果実を咥え 唇欲しがる 可愛い君よ 醜い業火も 天なる雨が 癒す筈だと 信じて唄う 腐る手足と 風が遊べば 瞳は落ちて 紅茶の中に 花片で彩る 秘密を纏い 耽美な罪の 墓穴に睡れ 「メルヘン」

詩情の祝福に 口実と至れる 充分な傷痕を 神々は授けた 命を削る中で 万物が抱えた 全ての薄倖に 運命は微笑む 素通りする声 端に寄る道程 裏切る程の雨 押し黙る奇蹟 僕が賢者なら 名前も遺さぬ 平穏の毒性で 翼を殺せるか 「恵みの悪意」

寝息が遠い 透明な夜は 君の忘れ方 検索してる 涙腺辿って 心に至れば 非情な嘘も 愛せる筈だ 甘く噛んで 不安を隠す 柔く撫でて 電脳に告ぐ 若い二匹の 解は危うく 潤んだ瞳に 狂病を視た 「携帯電話」

僕の言葉まで 過ちを恐れて 繰返す退屈に 縋り付いても 君の愛情すら 憂世に穢され 素直な哲学を 覆い隠しても 肌で温もって 胸に安らいで 宇宙を感じる 永遠が混じる 二人の未来に 嘘を重ねても 曇った満月が 輝かなくても 「ルナ」

真実は偽作 無情な手品 帽子の中で 息絶えた鳩 一匙の恋も 喧騒は葬る 心に重さを 感じぬ儘で 人生は悪書 狂者の戯曲 夢で微笑む 憐れな美神 誰も関せず 幻想と睡る 妄言だけを 墓に刻んで 「醜夫の幸せ」

桜花が乱れて 貴方の御骨に 色見を差せば 盃は満ちゆく 科白も亡くし 命に軽んじて 言霊酔い酔い 無明を尽くす 襖を閉ざして 哀悼気取れば 黄泉の国かな 下人は還らず 座敷の秘する 生贄を鎮めて 雨は止処無く 悪鬼に憐れむ 「骸ヶ村」

銃を咥えて 犯される娘 濁った瞳に 真理が宿る 恐怖も無く 飽和する闇 憂世は廻り 静かに失う その欠落を 充足する命 運命如きが 抵抗するな 快楽の末に 間違える人 下で喘ぐは 神々か何か 「地獄創生」

夏の降る夜に 私を傷付けて 貫いた痛みが 女王へ変えた 孤独を恐れた 大人ぶる痕で 想いは実ると 盲信したくて 膿んだ復讐は 鏡越しで泣く 雪の季節なら 祝福もあるの 肉の底で睡る 若い弱音さえ 今は愛おしく 恋心を照らす 「ピアス」

袋を被った 悪人は語る 多感な幸福 逆説の原理 鎖で縛られ 足枷が鳴く 死を唄う程 闇は美しい 罪が描いた 実験で導く 異形な哲学 賛美の疫病 縄に括られ 定義へ至る 罰が為す儘 解を喜んだ 「ソクラテス」

君に嬉しくて 明日は来ない 恋の色を知り 温度と離れる 柔肌で感じて 全て忘れれば 雨が夢に見る 熱情を殺せば 僕は羽搏いて 希望が捜せず 切に礼を言い 悲愴と混じる 亡霊が讃えて 朝も自慢げで 花と風の鳴く 幸せを憎んで 「有給届」

平和の唄は 偉そうだね 戦場駆ける 娘が微笑む 恋した夜は 我が儘だね 凍えて睡る 水子が俯く 只の正論は 不愉快だね 端役に至る 骸が憐れむ 喘ぐ天才は 欲張りだね 命を棄てる 詩人が嘯く 「遺せし戯言」

硝子で造った 君への想いは 偽物みたいに 祈りを集める 全て傷つける 鋭利な素肌を 昏き血の為に 必死で磨いた 銀河も映した 懐中の世界で 惑星を廻って 恋心こそ咲く 甘く拒まれる 僅かな不実が 僕だけ殺して 光は散ばった 「ピカピカ」

晴天の朝に 君は美しく 指先が絡む 聖い散歩道 幸せの隣に 瞳が煌めく 丁寧な愛を 肌で感じた 祝福の前に 僕は醜くて 包丁が眩む 赤い万華鏡 病垂の痕に 命も呪って 正気な心は 闇で壊れた 「血の花」

極限の科学に 概念と恋した 微笑む信号は 前提を熔かす 無垢な電脳が 健気に甘える 正しき解法を 愛情と喩えた 意識は模造と 感情は偽物と 骨を包む肉が 僕に絡み付く 打鍵の旋律で 貴方を醒ます 幸福な言葉と 銃声が重なる 「ハル」

鬼の住処で 平穏を知る 恐れぬ肉は 踊り狂って 甘い孤独が 心に沁みる 角を磨けば 心地好い夜 迷える娘は 膣を薫らす 静謐な血も 無骨に乱れ 異形な情が 楽土を殺す 真の地獄は 恋する叡智 「破戒姫」

流れ星は淡く 追想を駆ける 煌きの情火が 懐古的過ぎて 命が熱を帯び 宇宙に燃える 恋人は遠くで 芸術と成った 誰彼の祈りに 誠実でいたい 生贄は悲愴を 隠す筈だから 光が闇を裂き 憎悪もいない 石屑の美学に 静謐は泣いた 「聖い死の夜」

醜悪な雨が 風を傷つけ 白き毛色は 鈍く褪せた 恒久な夜が 愛を奪って 甘き調べは 脆く枯れた 豊潤な空が 街を見放し 寛き自由は 遠く去った 狂った翼で 屋上を離れ 強く羽搏く 切に羽搏く 「夢見る鳥」

夏の色は惜別 死を跨ぎ歩く 友が遺す器に 花で返答する 夏の雨は悲痛 汗に生を知る 罪悪響く骨が 嘘と合唱する 夏の風は絶望 世を惨く運ぶ 痕に宿る証も 空が強奪する 夏の朝は苦悩 夢に君が棲む 真実眩む園で 僕を同情する 「グッド・バイ」

感情の名は 虚言に至る 虎が睡った 心を愛せど 深淵で鳴く 或いは祈る 聖人訛りの 切なる亡者 天啓の色は 目玉を潰す 嵐で濡れた 闇も赦せば 楽園に咲く 或いは縋る 英雄依存の 夢見る少女 「人造美学」

敗北した星が 何より美しく 運命も永遠も 魂ごと亡くす 死ぬ光の量に 善悪を定めず 原罪も代償も 愛しい真実だ 偉大な存在は 芸術と評して 崩壊も永眠も 称讃を重ねる 僕の薄倖さえ 燃料に費やし 絶望も哀愁も 遠のいて輝く 「万有慈悲」

切情の富む 曇った指環 調和する痕 哲学が在る 寝顔を尊ぶ 恋人の儀式 頬張る林檎 静謐が在る 原色に塗る 神経質な闇 片足の仔猫 惜別が在る 追憶で惑う 耳に障る嘘 枯れ往く菫 問題が在る 「狂愛芸術」

過ぎた青春は 全て傷つけて 原罪を灯した 風と共に去れ 片翼の小鳥が 朝陽を呪えど 二長調で唄う 風と共に去れ 暗い地下鉄で 何度泪しても 終焉は来ない 風と共に去れ 意思の綻びも 化粧で彩れば 魔が扉を叩く 風と共に去れ 「清潔な嵐」

隻眼の獣が 僕に哮ける 確かな我欲 狂熱を呪え 千々の骨が 僕に告げる 密かな悲愴 追憶を護れ 藍色の病が 僕に強いる 必死な詩情 執念を想え 盤上の神が 僕に萌ゆる 一途な末路 切望を祈れ 「欠落の夜」

恋人の熱量に 甘く舌が這う 産道は捩れて 暗がりで灯る 少女の祝福は 声を胸で塞ぐ 子宮が脈打ち 最果てに睡る 生娘の反響で 強く爪が噛む 羊水も造れず 無垢色は宿る 母親の希望を 月は傍で噎ぶ 経血に苦しみ 或る肉が語る 「君の児」

記憶の砂が ただ煌いて 僕に残った 感傷を知る 脳が悶える 大罪な確信 風に流れた 最善の告白 罹る若さは 遺恨を服し 君に正しい 化物と成る 神も裏切る 境界の喪失 恋に鎖した 残酷な静謐 「共喰い」