ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

死刑台で唄い 背肉を破る翅 群衆は畏れて 炬火を投じる 炎で照る姿は 悪夢に美しく 蝶の破片だと 子供が囁いた 楽曲は優しく しかし蔑んで 唯一の本物を 心に刻ませる 何れ翅を広げ 闇夜へ消えた 林檎の芳香を 微かに残して 「魔女の慈悲」

矛盾が宿る 僕の視線は 貴方の影を 錯覚させた 裸で微笑む 貴方の胸が 僕を包んで 宇宙と成る 発育不良な 僕の言葉と 貴方の声が 性交をする 不治の妄想 貴方は夜霧 不随の祈り 貴方は陽炎 「永遠の寝言」

天国で語るは 我が愛の顛末 その音楽劇で 退屈を慰める 泣く程の恋に 疑う程の倖せ 全て詩篇にし 繰り返し唄う 海の思い出も 扉を叩く音も 慈しむ鼓動の 類いに及ばず 称賛が赦すは 空の下のキス 恋した貴方に 唯一の少女に 「天国の舞台」

君は雨上がり 僕は季節外れ 巡り廻る心に 逢い別れ刻む 濡れた髪触れ 低い咳をする 願い祈る命に 逢い別れ刻む 君の長い睫毛 露が溢れ綺麗 浄く眺む朝に 逢い別れ刻む 心なし震えて 真夏に悴めば 求め捜す愛に 逢い別れ刻む 「サヨナラ」

想いは幻影 甘い蜃気楼 君が好きと 誤る九月は 脳髄の迷子 冷たい稲妻 悪夢の如く 直感に惑う 感情が騙す 運命の所在 結末に描く 道化の幸福 偽物の日々 温もる嘘に 命を賭ける その美しさ 「恋の屍鬼」

僕の代わりは 何だって善い 倖せの構造に 螺子を回した 草木が枯れて 小鳥は落ちて これ以上望む 慕情など無い 君は涙を注ぎ 大海を作った 溺れる獣らは 満足げに沈む 昔々で始める 愛の黒歴史は 僕を忘れても 舌の上で残る 「君を願う」

髪を切り刻み 恋に弔う少女 浴槽へ沈めば 痕も洗われる 誰も悪くない それ故悪いと 錠剤を齧って 蛇口を咥える 裸で死ぬのは 酷く間抜けね 生きる自分を 茶化してみる 肌を伝う水で 溢れる排水口 涙みたいだと 静寂が呟いて 「恋と冷水」

死を赦せない 哀しみの中で 震える両手を 必死に洗った 少しでも多く 貴方を包んで 繋ぎ止めると 誓った決意よ 今は水道から 海へと還って 無用な魂だけ 惨めに残った 愛すれば殺す 僕の仕組みを 擦る音だけが 見詰めている 「愛喰い」

私の肉を喰らい 甘いと絶賛する 鮮度が善いから 育ちが善いから 飾られた頭部に 五感は健在する 嗅ぎ視て味わい 痛みと声に縋る 乳房のハム齧り 喜ぶ醜い美食家 私の胸の願いに 気づく事は無い 皆で貪り尽くし 神は赦すと宣う 一人咽ぶ子供の 凶気も知らぬ儘…

廻る天体に 模範的な闇 鎮魂歌の中 旅を欲する 林檎の涙で 壜を満たし 連なる流星 名を与える 濡れた躰の 浄い恩恵に 恒星を全て 拝借しよう 終着の時も 理解してる 善なる君は 惑星の天使 「宇宙の国」

猛毒の世界は 無闇に清潔で 沈む僕の心を 甘く肯定する 神様を救えど 暗がりは深く 伸ばす腕には 罪の鱗が付く 錬金術で創る 少女の面影は 風と共に泣き 雨と共に死ぬ 屍体を暴いて 愛着が湧く頃 腐乱する肌に 全て思い出す 「遡る血」

淡い意識に 洗濯機の音 白い太陽と 金属の温度 君の薫りが 脳を薄れる 人生は映画 蓄えるメモ 涙も飽きた 無力な手首 冗句齧って 心を裏切る 実感は遅く 効力は永い 荒野の風に 枯れる小花 「乾く失恋」

小銭稼ぎは歩く 街中の灯を眺め 全て買い取れば 僕は王様となる 小銭稼ぎは歩く 萌ゆる花を嗅ぎ 全て君に捧げば 僕は恋人となる 小銭稼ぎは歩く 疲れた人を考え 全て殺せたなら 僕は英雄となる 小銭稼ぎは歩く 高い神様を問い 全て赦せたなら 僕は幸福となる…

艶めいた 灯りの中 臆病な指 咥えてる 唾液から 牝の薫り 理性殺す 甘い夜露 乱暴な唇 獣の爪痕 頭の隅の 暗い誠実 夜の国で 私は踊る 机に輝く 白金の嘘 「軋むだけ」

戦争ごっこは 得意な遊びだ 木の銃持てば 頭蓋を砕いて 僅かな天国に 頷いてみても 茶目で壊した 善意は戻らぬ 道徳の時間は 気分が良いぞ 主張を掲げて 女子に種付け 大きな声にて ドミソと語り 転ずる批難で 地獄も愉しむ 「虫の好い家畜」

死神の感傷を 理解する少年 虫籠を眺めて 胸中が騒めく 哀しみの鶏肉 上品に齧れば 人殺しは英雄 控えめに笑う 迎えを望んで 神を侮辱する 隣人が死ねば その柩を運ぶ 高齢な少女は 死神を唄って 甘き魅了の中 今に事切れる 「泣く程に死神」

褐色に焼けた肌 白く輝く歯並び 不相応だが事実 君は屍鬼だった 穴だらけの躰に キスを与えよう 悪い血が溜れば 葡萄酒を注ごう お互い裸のまま 体温を捧げよう 欧米産の人肉は 嬉々とし頂こう 君が死ねぬなら 僕が死を殺すよ 言葉は必要無い 必ず愛するから…

苔生す魚は ノロノロと 君の屍体を 啄いている 死んだ瞳に ガリガリな 臓物抱えて 眺める空よ 照る満月に ドキドキと 恋する心は 泡と隠して 酉の星には カラカラの 極楽浄土が 魚を待つと 「銀鱗の夢」

旋律に焦がれ 君の傍で泣く 繊細な打鍵は 愛を裸にする 細部に宿る詩 感情的な転調 贅沢な反響に 生涯を忘れる か細い指先は 天使すら殺し 鍵盤の正気も 君は奪い取る この儘死ねば 完璧な終曲に 無垢な君には 孤独が似合う 「鋭利なピアノ」

不揃いの生首が 秘境の樹に実る 怒り苦悶する顔 哀しみ涙する顔 食べ頃は彼らが 諦めた時が好い 刈り取る瞬間の 自失の心地良さ 両手一杯の顔を 一つ選んで齧る 熟れた自意識が 喉を焼く程甘い 誰の顔か知らず ただ不幸を知る 僕の胃袋は常に 他責で満ちてる…

僕の神話は 雨上がりに 疲れた星の 讃美を唄う 知らぬ言葉 大切にして 落書き残る 目蓋の裏よ 愛でる心に 手応え求め 素敵な夜と 呟いてみる 妖精も泣く 迷える嘘を 切に縋って 何とか睡る 「或る夜の儀式」

教室の片隅で 爆薬を炸裂し 気色悪い輩の 朗読を上塗る 幾何学な性器 黒板に描いて 作者の心理を 明確にさせる 淡い翅広げて 校庭を睨む君 低く咆吼して 遺作に嵌る僕 賢治の讃した 異様な善意を 信じず憐れむ 浄すぎるから 「文学な制服」

君の名を拐い 僕は寵愛する 砕けた両足も 大切な個性と 躰を寄せ合い 温度に触れる 強気な瞳には 僕も獣と化す 散漫な冗句と 大仰な流星群 君の涙を求め 夜に放たれる 幻滅の恋文に 魔法を知れば 死を望む君は 冷蔵庫で睡る 「冷やす恋」

僕は安全剃刀 病の三歩前で 刻んだ倖せは もう必要ない 君は僕を愛し 灯りの下歩く 輝く切っ先に 悪い夢を視て 尊厳を護れど 過ちを赦せど 僕の才能では 手首も癒せず 君は僕を揮う 静謐な楽曲で 自分の影さえ 追い払う為に 「剃刀の詩情」

濁る汚水に 赤色の部屋 内臓を犯す 切望の暴力 醜い顔の儘 非遇に睡る 不可の量で 囚人を想う 肥えた愛に 生物を学ぶ 笑顔の術も 心得てみる 救済の儀で 瞳に映るは 顔の無い母 絶叫が響く 「胎内地獄」

年老いた僕に 手を伸ばす君 清潔な寝台の 一輪の向日葵 君は涙で歪み それ故美しい 瞳に刻み付け 僕の物とする 遠のく喧騒に もう何も無い 僕の空は暗く 君の空は淡く 団扇の涼風で 骨肉も緩めば 惜別の口紅が 頬を少し彩る 「看取る空」

大雨の中 身を放る 鬱の重力 その作用 遠い追憶 堪え難く 脳が熱し 嘘を視る 僕は既に 死した者 罪の証と 丸を打つ 骸が砕け 目も虚ろ 叩く雫が 騒がしい 「落下物」

生肉を焼けば 失われるもの 事実を知れば 奪われるもの ミキサーの中 僕らは育って 喧嘩や恋をし 時には祈った 生涯の役目に 僕も歳を取り 意味を得た頃 ふと俯瞰する 刃が回りだし 攪拌は迫れる 確かに何かが ある筈なのに 「六枚刃の神様」