ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

十字架が必要な 青年は世を呪う 僕は彼の悪意を 憤りで塗り潰す 青年も歳を取り 自らの罪を知る しかし薄く笑い 映す鏡面は歪む 僕に正義は無い 裁く快楽を求む 青年の憎しみが 愛を豊かにする 僕は偏在するぞ 君の性根を視よ 振り翳す刃物の その高揚を知れ…

茹だる体温と 甘いため息に 渇望の角度は 切れ味を増す 猫撫で声には 切実さが宿り 求める潤みに 僕は舌を出す 台詞を暗唱し 手の鳴る方へ 儀式に倣って 重なり果てる 煙草の苦味に 気遣い合えば 乳房の味さえ 褪せる角砂糖 「色の触れ方」

漢字の「雫」より。

君の頬を流れる 一筋の毒に触れ 指先を舐めた時 僕は喪失を悟る 一緒に死のうと 誓った夜でさえ 雫の無い温度で 僕らは微笑めた 僕は言葉に頼り 君を飾り過ぎた 君は恋を信じて 僕を赦し過ぎた 君の果実の毒が 僕を醜く生かす 孤独な雫は乾き 黒い空へ溶けた…

君は散る桜 疚しい春に 虚ろな僕の 本音を赦す 雨は残酷で 君が蕩けて 指先の情の 化粧が滲む 完璧な夏は 君の残像が 満天の枝に 口づけする 再会を望み 僕は古びて 遠くの恋に 涙で汚れた 「晩夏の慕情」

詩篇は自由だと 語って呉れるな 深く落胆を覚え 寒気がするから 詩人は秘匿する 偽物の生き物だ 甘い思想で誘い 嘘を餌に鳴かす 巧みな筆の血で 群衆は騙される 真相を奪う時の 下劣な愉悦さよ その上僕らまで 捏造の美しさに 人知れず狂って 地獄を求むのだ…

役立たずの僕は 緩やかに絶望し 儚く笑う街角で 畸形な夢を観る 約束は守れずに 満月が睨んでる 淋しい旋律の中 忘失を一瞥する 蝶々の声が好き あとは全部嫌い 醜い神様の子は 黒い昼に眩めく 抜け殻が泣いて 僕の孤独を呼ぶ これで最期だと 密かに懺悔して…

拳銃を下さい 其れを頼りに 淋しい生涯を 生き抜くから 銃声は遠くで 何かの終焉と 何かの罪悪を 夜に響かせる 僕は殺すのか 殺されるのか 痛みは確かに 脳を撃ち抜く 必要なものは 一発の銃弾で 拠り所にした 丁度善い閉幕 「拳銃は一撃で」

工事現場で 砕いた君を 毎日食後に 服用してる その成分は 僕が多幸を 盲信するに 十分だった 駆け巡る程 君の概念は 日々濃厚に 僕と混ざる 脳髄の奥を 甘噛みする 切な痛みに 世界は輝く 「君の処方」

矛盾してれば 赦せてたのに 正しさが僕の 感性を蔑する 孔雀のように 艶やかな一節 壁画のように 勇猛なる一節 それでも僕が 心震わすのは 自傷癖を持つ 老犬の遠吠え この美しさが 暗がりならば 僕には修羅を 聖戦の合図を 「文学戦線」

哲学の国では 誰もが学徒だ 其々の哲学で 人生を着飾る 二元論者の少年 恋愛主義の乙女 嘘を愛する老人 打算を願う王様 考え得る事は 全て天啓だと 信じて疑わぬ 豊かなる風土 博愛的な殺人鬼 刹那主義の乞食 完璧を求む貴方 論破に怯える僕 「哲学の国」

精神は双子で 心に君がいる 人格を結べば 一緒に闘える 僕の美点など 大いに白けて 偏執で奔放な 君の影に縋る 癖になる程に 自分を嫌って 堪え難い程に 自分を求めた それらを君は 二行で応じる 幻想は墓穴に 感傷は文学に 「双生児」

水子を踏み砕き 便所に流し戻る 伽藍堂の母胎に 指揮棒を振る為 我が儘は嫌えど 細断すれば飾る 好機などは無く 手遅れが語らう 人形のままなら 僕の家族なのに 愛情は残酷だね 欲せば奪われる 少女は母の顔で 化物と重なれば 蒐集癖の調べに 不要な肉と化す…

異常の花は 屈辱を浴び 音も立てず 咲き乱れる 希望も無く 揺れる花弁 安らぎ無く 張り巡る根 悪意が薫る 自暴の蜜を 誰もが厭い 美を見限る 非才の欲に 徒労な復讐 末期な僕は 肋骨を曝す 「無駄咲き」

少し童顔な君は 困った風に笑い 僕の淡い想いを 大袈裟に驚くね 人目を気にして 高架下で交わす 初めてのキスは 悪夢の味がした 話し辛いのなら 僕は先に行くね 花束は要らない 淋しくなるから 君と僕の言葉が これ程違うのは 片想いの中だけ 恋は色付くから…

惑星の肌 剥ぎ取り 悲鳴の中 生きてる 当の僕は 病めども 喧騒怯え 閉ざすの 赤糸触り 千切れた 指を咥え 出会える 当の僕は 醒めたら 約束遺し さよなら 「生者と僕」

僕が使うのは 不幸な魔法で 悪意の素顔を 正しく見渡す 失望軽蔑憎悪 呪文は鬱血し 代償生贄罪悪 僕の僕を奪う 魔法でお空に 虹を架けたい 淋しい詩人に 天を与えたい 僕が使うのは 不幸な魔法で 萌む絶望だけ ただ胸に残る 「僕の魔法」

死屍累々な 詩篇に潜み 恋文の如く 世を恨めば 疚しい節に 頭を抱えて 初雪の詞を 獰猛に求む 犯人捜しの 文学の群れ 血の雨の中 教養を語る 沈黙こそが 賢明なれど 言葉恋しく 嵐は止まぬ 「詩人の輪郭」

幻熱の揺らぎに 僕は意思を失う 裏の裏で歩んだ 夢遊病な足取り 形骸化した恋に 役割の口付けを 陽炎に眩んだ後 遠い恋慕は歪む 肌を焼く痛みに 醜い鏡を割って 喉に溢れる涎は 永久装置となる 白は否応無しに 哲学を塗り潰す 自壊する理性は 生きるに便利だ…

亡霊の脳みそは 鉄棒の味がする 透き通る遺恨も 舌の上で踊るぞ 人間を諦めたら 既に家畜と同じ 美食家が貪るは 不幸で太る肉塊 想い出を煮立ち 一杯のスウプに 初恋は白濁して 赤い背信を彩る 遣り残しに頼り 知覚する馬鹿は 僕の胃袋の中で 永遠に死を選べ…

貴方の為ならば 全て犠牲にする そう語る自分が 何より許し難い 孤児は泣き喚き 兵士は傷を負い 獣は森を奪われ 中央線は止まる それでも恋心が 蜃気楼に縋れば 僕は貴方の影で 永遠に呪われる 約束が足枷へと 化ける午前二時 愛は此処にある 愛は生命にある…

僕の一途な憂鬱群を 全て食器に嘔吐して 光る遠慮を数えたら 薬を呷ってやり直す 硝子が砕ける音の後 僕は必ず気が触れる 暴力性は意図を持ち 知覚で心を是正する 雄弁の人に罪はなく 解釈の痕が辛いだけ 僕を勝手に括るのは 死人を殺す茶番かな 貴方が問う…

牙を剥けば 同情されて 終焉の笛が お空に響く 謝絶の箱に 蒐集されて 死骸は近く 心が病める 愛を説けば 軽蔑されて 浴びる礫に 罪が砕ける 処刑の槍で 拷問されて 流れる命を 誰もが敬う 「運命の悪意」

空の海月に 手を伸ばす その猛毒に 命を震わせ 屋上で想い 懲りもせず 追憶の中の 過ちを捜す 飴玉の瞳も 泣き暮れて 舌で転がす 面影に甘え 夏を誓って 散りぬるを 陽炎の如く 輪郭を奪う 「死んだ恋人」

霊安室には 僕の屍体が 他人の顔で 眠り続ける 僕の衝撃を 想像したら 三十年ほど 惨めになる 嗚咽す人々 睨む母親に 僕は言葉を 諦めている 夢で語るは 冥界の林檎 その甘美さ その淋しさ 「理論の亡霊」

仇なす子供は 秘密の火薬を 砂場に埋めて 夕日を目指す 伸びる影には 本音を話して 消えゆく彼の 最期を看取る 罪の意味さえ 噛み砕けたら 大人の神性の 夢さえ醒める 世界の果てで 淋しい残響の 理念の無さを 誇りに感じる 「幼い爆弾」

新宿駅に眠る 飛竜のように 僕も人知れず 噂の中に棲む 夢見る屍鬼は 尊い心を持つ 僕も模範とし 甘い死を赦す 中央線を愛す 美しい魔女は 旧型の車両で 僕と逃奔する 根暗な吸血鬼 理解者を捜す 永遠の惜別に 僕と約束して 「幻想と親愛」

貴方を失った 幻肢痛が疼く 腐敗で爛れた 僕の胸の虚数 的外れに笑い 自動的に泣く 生態は人間を 敗北へと誘う 貴方を忘れた 世の中の価値 憎む程なのか 残る程なのか 口から溢れる 神の呻き声に 大丈夫な筈が 筈が筈が筈が 「亡骸」

聖書のように 少女を信じて この身を弁え 讃える儀式で その姫の踵へ 舌を這わせて 甘い肉の味に 静かに涙ぐむ 普段は遠くで 想いに火照る この幸いさえ 僕には贅沢で なのに彼女は 愛を欲しがる 高貴な神には 禁忌と知れど 「僕のお姫様」

僕の自殺点 日々重ねて もう普通も 求められず 死に損ない ただの迷惑 命の続きに 犠牲を積む 本当の心は 酷く頑丈で 悪戯に続く 器用な寸劇 完璧な過ち 後は空っぽ 笑う事すら 難しいかな 「不狂の狂人」

研磨した笑顔で 群衆を誤解させ 柔らかな後説に 一切が愛を称す 人柄の良さだけ 現実に切り取り 神様と揶揄され 遺影は微笑んだ 僕は知っている 本当は孤独の中 真意を黙殺した 悲痛の殺人性を 骨は粉の味がし 唾と共に捨てた 蝉の悲鳴が響く 乱反射の季節に…