2013-11-20 ■ 湯船一杯の海の中で 僕の体は溶けていく 次第に形は胎芽に戻り いずれ跡形もなく消え失せる ああ、君よ、大切な君よ そしたら栓を抜いておくれ 底に渦巻く想いを見届けながら 僕の物だった未練がましい魂が 詰まらぬように掻き混ぜて欲しい それから君は体を清めるのだ もう僕の含まれない新しき海で 無邪気な裸を丁寧になぞりながらも 宇宙に燃える恒星を胸に宿したら 白く赤く青く時々は黒く 貴方の肌を色めかして生きなさい 海は何処へ帰るのか 僕は今も知らないままだ だから含有された小さな海の 行き着く在処に夢を見ている 「浴槽の海」