ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


激しい恋の詩が好きだ
だけど僕にはそんなもの書けない
大凡書けやしない
僕は激しい恋を燃やさずにいる
一度たりとも赤くは染まらぬ
其れを不幸という人々が集まった街に僕は
随分と暮らしているはずなのだけれども
それでも一度たりとも戯曲ですら
戯れたことがないのだ
恐らく僕は随分昔に
完全な失恋を誰彼構わずしてまわり
這いずり回ってこの街にたどり着いたのだ
だから誰しもが僕を不幸だというのは
もっともなことに違いない
しかし僕は何分好きであるがゆえに
そう見せかけた想いを書き綴ろうと悩む
悩むのはいいものの僕は不幸な上に
其れに気付く頭すらないようで
度々閉口しては街の人々に聞く
「それはどんな想いなのですか? 痛くはありませんか?」
「どのような形の代物なのですか? 怖くはありませんか?」
そうするときまって人々は鼻で笑い
僕に其れを教えてくれることはない
恐らくそういう要素こそが恋であり、愛であるのだろうと
僕は引きつった笑みで頷くけれど
やはり僕が生まれる前にしてしまった失恋を
想い、街に出るのに怯え泣く




「恋慕」