青春というものに憧れて
僕一人では心許ないので
学生通りにナイフを持って
震える草片を狩りに行く
悲鳴をあげる痩せすぎの白葱
怒声で暴れる背の高い大根
ちょろちょろ逃げる可愛い鷹の爪
そして本命のお洒落な胡瓜たち
綺麗に乱切りができない僕でも
指先の棘を取り除くことはできる
裸に剥いて少しだけ味付けをしたら
サラダボウルは何処までもまあるい
野菜ジュースをこぼした両手を
狭い台所で洗ったときに
シンクに映った僕の青春は
数少ない秘密の一つになった
「青春野菜君」