2017-05-16 ■ 踏切の赤が 裡で喧騒し 嘆願は潰れ 真実を病む 右足拾って 線路で弱る 愚かな夏が 僕を蝕めど 水仙の白が 喉で独奏し 約束は暴れ 遠景を往く 箱庭穢して 毛布で氷る 静かな朝が 僕を導けば 「歪な陽炎」
2017-05-15 ■ 睫毛の光沢を 君は放棄して 悪い風が詠む 色眼鏡に肯く 淋しい香水は 誰にも届かず 口癖が溢れて 忘却を演じる 慈愛の足枷を 僕は厭忌して 古い夢が弾く 蜃気楼に佇む 哀しい天性は 何にも望まず 憂欝が穢れて 終焉を嘆じる 「唇の距離」
2017-05-14 ■ 聾唖の夢で 君が微笑む 叫んだ心は 静謐に霞む 孤絶する波 枯葉剤の雨 僕が呪えど 景色は離れ 片端の嘘で 君が大泣く 捧げた命は 欠乏に響く 誤想する骨 殺人鬼の灰 僕が赦せど 正理は毀れ 「山嵐の整合」
2017-05-13 ■ 爆弾が降った 御姫様の罪に 恋する悪夢は 僕を制圧した 天性の比重は 静かに差別し 一途な旅路を 甘く流産する 街並が散った 赤頭巾の嘘に 毒する生花は 君を送葬した 空想の調和は 愚かに飛躍し 無闇な詩篇を 深く熟成する 「童話戦禍」
2017-05-12 ■ 屑肉の木は 貧困に実り 健気な虎が 忙しく齧る 僕の遺骨は 夢を磨かず 雨音みたく 深淵で鳴る 黄金の血は 贅沢に廻り 偉大な豚が 麗しく搾る 神の奇蹟は 恥を歩まず 星空みたく 遠景で散る 「家畜聖典」
2017-05-11 ■ 硝子玉に燈る 生ける叙景は 僕の失楽園を 煌いて魅せる 文脈の日蔭に 推敲を重ねて 多義な傍点が 甘く同棲する 黙示録に遺る 病める受難は 君の再誕祭を 貴んで終える 転調の迷夢に 音域を委ねて 美技な旋律が 深く婚礼する 「聖供の愛し」
2017-05-10 ■ 縄師が縛る 罪なる躯は 肉の極点を 熱烈に謳う 高揚の汗に 泪が滲んで 自在感じる 真理を導く 胎児が実る 幸なる心は 生の宿縁を 温厚に示す 平穏の裡に 命が響いて 奇蹟信じる 愚盲を嗜む 「女たる万有」