近所の公園の砂場には
制服のボタンが落ちていて
その存在そのものまでが
意味を持っては静かに輝く
その紡糸を引き千切ったのは
男であったか女であったか
その砂遊びの結末の情景は
幸せだったか不幸だったか
そこに在るというそれだけで
僕らは幾つもの物語を作る
そして物語の登場人物は
みんな決まって顔が無かった
ふと、僕が無くした幾千のボタンを
思い出して苦い気持ちになる
感傷への介入は好きではないし
このボタンには僕の面影がないからね
「砂場のボタン」