怨嗟の墓に
故里を去る
身軽な嘘が
街で喘いで
祖は形骸し
理屈で黙る
静物の恋を
違える儘に
奇蹟の膣に
梅毒を知る
孤高な猫が
舌で偲んで
児は散漫し
自由で廃る
神託の雨を
厭える程に
「無頼の壇」
芸術幼女言語の最深部。
或いは美型詩の実験場。
革命の回路を
内在した君よ
善悪は淋しく
掌編で灼ける
演劇で死んだ
詩人の現実に
哲学も白けて
時が牙を剥く
天秤の定理を
盲信した君よ
躁鬱は烈しく
論証で富める
公園で抱いた
玩具の幸福に
本能も薄めて
罪が星を編む
「抗える児」
義眼の裏で
溺れる母親
届かぬ指が
暴悪を掴む
仔猫は匣で
正義を唱え
三途の沼に
詠って沈む
麻酔の味で
悶える愛人
拒まぬ喉が
宵闇を呻く
生花は月で
朝陽を忘れ
讃美の毒に
想って靡く
「切なる娘」
昼の子守唄が
韓語で訛れば
隔絶的な僕は
夢に人を殺す
学問は荷物だ
芯を知る程に
睡魔は散漫し
沈黙が乱れる
雨の通勤路が
地獄で曲れば
平行線な君は
傘に肉を恵む
恋愛は煙草だ
欲を去る儘に
名残は永別し
猛毒が重なる
「形骸国花」
水星に往く
帰れぬ街は
信号で溢れ
僕を禁じた
文学は死す
韻の亀裂が
海を騒がせ
焚書で悼む
雪道に吐く
踊れぬ鬼は
哀憐で暴れ
僕を演じた
元凶は魅す
盲の至福が
翅を紡がせ
悪夢で否む
「脳病」
失恋の底で
玉葱を刻む
清潔な音に
魂が融ける
古い毛布は
名残が薫り
窓を閉めて
初雪に祈る
背信の淵で
仏壇を拝む
散漫な熱に
幻が負ける
永い歴史は
私欲が宿り
縄を絞めて
桜木に実る
「幸子の陰」