亡霊のキスは冷たい
何故ならそこに求愛がないから
過ぎ去った日々の反芻に
欲しがるものはスポットライト
動きを止めた心臓が
血液の代わりに恨み言を流す
言葉にすると安直な
死ねとか殺すとかそういうもの
でも此処には憧憬がある
何も致せないという幸福の中
何も起こらないという優しさの中
僕の体はピカピカになり
その細かな寂しさに驚いてしまう
成仏なんてするものか
いつか意味さえ失ってしまえど
存在を存在と意識できる今だけが
人間未満の僕には嬉しいのだ
「心の生きる亡霊」