ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


彼女は熱っぽい唇で囁いた
彼は多くの詩を持って呟いた


彼女は誰もいないと囁いた
彼は君を見つけたと呟いた


彼女は蕩けた声で囁いた
彼は讃えた心を呟いた


彼女は命は終わると囁いた
彼は愛は語れると呟いた


彼女は吐息を絡ませ囁いた
彼は優しく撫でて呟いた


彼女は私が分からないと囁いた
彼は其れに魘されたいと呟いた


彼女は胸の中で囁いた
彼は首筋を見つめて呟いた


彼女は地獄だと囁いた
彼は辿り着けたと呟いた


彼女は溶け落ちて囁いた
彼は潜り込んで呟いた


その言葉は彼らだけのものだった
部屋は其れきり静かだった


部屋を包む夜は透明だった


星が空から落ちてしまいそうと囁いた
月が夜を抱きしめてしまいたいと呟いた




「彼らの夜」