寒空の下で生きるとは
五センチ以上は拒絶する事
表情筋に期待を持たない事
無慈悲な足取りで進む事
疲れたら素直に死んでしまう事
覗いた窓の中の温もりに
決して琴線が触れてはいけない
町並みに立ちずさむ情婦たちに
決して心を許してはいけない
手にできる温度はマッチだけ
煙草は思いがけずに冷淡だ
命の熱量を浪費しなければ
僕は僕らしく生きる事が出来ない
コートの襟をマフラーで隠し
故郷を想う気力も湧かず
責任感の無い風が頬を殴り
空は遠くで他人の顔をする
そうして夜を繰り返すなら
いずれ小鳥も全てが死ぬさ
黒く覚えた余白を辿り
この死の季節を生き抜くことの
なんと冷色な心の痛みか
僕の孤独は赦される事無く
踏み潰したのは骸か愛か
今はそれさえも分からないでいる
「寒気哀歌」