ライトポエムの最深部。


或いは美型詩の実験場。


僕はカラスが憎いです。彼らは僕に襲い掛かります。まるで僕が、彼らの前で無力だと言わんばかりに、巫山戯て、馬鹿にして、舐めきって、見下して、僕の上空を低空飛行します。時には啄まんとするように、僕で遊び回すのです。彼らの目玉は、小さい頃に、口に入れるほど愛して壊した人形のミカちゃんの目にそっくりです。だけども、僕は決して安心などしません。僕は芸術家なので、全てを形而上な観点で見つめます。つまりは、状態における自然性の悪意なのです。僕の愛への冒涜の為に、カラスたちは何らかの使命を持って、僕を襲うのに違いないのです。僕が思わず泣き出せば、彼らは酷く満足をして、巣で待っている雛鳥たちに笑って聞かせるに決まっています。だから僕は泣きません。ただ少しパンティーを濡らす程度です。その感覚は、処女を捨てる時の少女の気持ちに似ている気がします。破瓜の痛みを知ることで、世の中の可能性に気づき、禁忌に対する勘違いを取り除くことができるのです。僕の青春はそんな少女たちの使用済み生理用品を集めることに始終しました。経血のゼリーは喉に引っかかって、僕に助けを求めてきます。それを飲み込むことにより、僕は少女性を奪還し、同時に男性としての気概を身につけていったのです。それは僕の初めての芸術作品であり、永遠のモチーフです。僕は本当に美しいものを知っているのです。大人とは敗北です。僕は常に勝者で在り続けます。だから、カラスが憎いのです。こんなにも勝利を約束された精神を宿した僕に、あろう事か浅ましい思想を以てして敗北主義者だと決めつけ、カアカアと僕を罵るのです。その屈辱は捕まえて、足でその頭蓋骨を踏み砕いても、晴れることはありません。傍でウロウロしている鳩を鋏で滅多刺ししても足りません。復讐には人格が必要なのです。僕は自らのサイズにピッタリの復讐をしなければなりません。そしてそれを芸術へと昇華させるのです。最近は陽射しが鋭いです。とっくの昔に処女膜を破り、精液を注がれ、性病と羊水に塗れながら子供を産んだ女性たちがベビーカーを押しながら、僕の青空アトリエで話す価値もない小言を集団で会議しています。もしかしたら一割くらいは価値のある僕の話をしているかもしれません。しかし、僕はグロテスクな彼女たちの誘惑にはうんざりしています。こちらを見つめて笑っている彼女たちは、何より人間性の未熟さが窺えます。いつの世も、親になりうる価値が備わらない人間たちがセックスをし、子を成して、偉そうに世の中に対して正義である立場を取ろうとします。その醜悪さは、見るも無残で、憐れみさえ感じます。だから僕が注目するのは、その穢れた母親ではなく、彼女たちの後ろをついて歩く子供達です。まだ純真で、社会を知らず、天使に近く、それでいて手のかかる時限爆弾のような彼女たち。彼女たちこそ僕の芸術に相応しい存在です。そして、僕の復讐に最もフィットする魂の持ち主です。彼女たちを口の中に入れたい。そう思ったとき、僕の愛は溢れています。しゃぶって、歯を立て、味わいたい。そしてその時感じたインスピレーションで芸術品は完成するのです。僕の心は常に裸です。躰の方も時々裸です。そうです、僕は成し遂げたのです。上手く誘き寄せ、懐かせて、芸術活動を成功させたのです。その過程で、幾つもの画期的な思考実験を行いましたが、それは創作上の秘匿に当たるので、多くは語りません。ただ課題点としては、次の時は壊さないようにするべきだという一点があったと言うことだけ述べておきます。この創作は、青空アトリエでは騒がしくて集中できないので、清潔な廃墟で行いました。僕は、僕が生きているからこそ、僕の芸術に意味があると思います。死して成し遂げるものは芸術ではなく、ただのゴミです。僕が生きているからこそ、そこに感情の発露があり、補完され、一つの美しさに変わるのです。僕を理解できずに排他しようとした、気持ち悪い群集たちには一生懸けても辿り着けないステージです。僕を殴った拳も僕を蹴飛ばした爪先も僕に暴言を浴びせた歯や舌も僕の愛を拒んだその肉体すら、最早負け犬の証明なのです。今は、この芸術作品に寄り添って美しさを満喫したい。僕より臭く、僕より冷たく、僕より柔らかい、この芸術を。なのに、目聡いカラスたちは、こんなにも静かな楽園を暴き出し、僕と作品を見つけ、包囲し、僕から奪おうとします。僕はカラスが憎いです。彼らは自らのことを正しいと信じきっているのです。だから僕から彼女を奪って、僕もまだ十分に味わってないというのに、その上質な血肉を喰らい尽くすのです。僕の芸術を台無しにできたと言って、クチバシの口角が少し上がるのを僕は見逃しませんでした。こんなにも僕を集団でストーキングして、苦しめるのは、最早偶然ではないはずです。明らかに僕に対する嫉妬や度が超えた好意で満たされているのです。僕は決してそんな歪んだものを愛したりはしません。僕は公明なものだけを愛し、認めるのです。それを知っているから、こんなにもしつこいんだと思います。僕から奪うことでこっちに興味を持たせる腹積もりに決まってます。なんと卑劣で卑屈で卑怯な思惑でしょうか。だから僕はカラスが憎いです。それを許す人間たちが憎いです。こんなにも僕を愛さない世界をたったの七日で手を抜きながら作った神様が何より憎いです。

 

 

「初夏のカラス」