ライトポエムの最深部。


或いは美型詩の実験場。


深海でプツプツと泡を吐きながら揺蕩う。僕は腕で躰を抱きしめるようにして縮こまる。だけど口から溢れる泡は、きっと永遠に尽きることがない。

泣き言の泡は小さく細かく、思い出話の泡は大きく途切れ途切れに。

全ては僕が失い、失えるものたちへの懺悔。こんなにも静かな深淵で、僕は丁寧に自分の非力さを確認し続ける。僕には訪れない未来に嘆いて、僕の知らない過去を惜しんで。

上下も左右も確かではなく、僕は光無き深海で心も裸になる。

お腹は空かない。眠くもならない。セックスだってきっと要らない。

「ああ、僕はもう人間をやめていたんだね」

ただ残るのは、柔らかい不安と、傷つき易い憧憬だけ。それさえ、他人を知ることの無いこの場所に、心の弱い僕を幾分か楽にしてくれた。

深海魚の群れに囲まれて、僕は少しだけ真面目な顔になる。僕の肉も骨も魂も、魚たちに貪欲に啄まれたら、少しは救われた気持ちになるのだろうか。救済のことを考えると、無闇に疲弊する自分がいた。

深海魚は醜いから、好い。盲目だから、好い。ノロマだから、好い。

僕の臓物と血液は深海の紺を汚してしまうが、波打ち際に辿り着く頃には、きっと美しい海水となる。

「ああ、僕には出来すぎた終焉だ」

そして幾重に吐き出した泡は、波とともに遠い国へと運ばれる。たまには、浅瀬を潜る少女に偏狂な愛の記録を語りかけるだろう。

 

 

「海底の囁き」