ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


ゴム製の幼女とメイク・ラヴしていると、正しい重圧の力学によって彼女は風船みたいに膨らみ割れました。散らばった肉片、いやゴム片は、目が覚めるような赤色を放ち僕の嗜虐心をくすぐります。僕は無造作にその肉塊(しつこく言えばゴム塊ですが)に手を突っ込み、色々なものを掘り出します。小学生の時やったお菓子の宝探しみたいで楽しくて、鼻歌が自然と溢れます。白濁した眼球はゼリーのようにドロリとしていて、今夜はお粥が食べたくなりました。品のある乳房の欠片は弾力があって、齧るたびに、脊髄に神経が繋がっているが故に、歯を剥き出しにした下顎から肋骨が生えている背骨までにかけた曲線に信号を送り、条件反射の如く喉を震わせて甘い嬌声をあげます。残念ながら子宮は完全に神経を断ち切られているので、彼女は反応をしません。臓物も全てぶち撒けているので、より躰は小さく見えます。臓物の暖かさは手のひらを湿らせ、ピュッピュと吹き出す血液を浴びると何故か誇らしい気持ちになります。ゴム製なので食べても美味しくないですが、見てくれは完全な死体なので、僕の心の苦痛を和らげてくれます。僕は最後に取っておいた頭蓋骨を割ると、中からエビの剥き身のような脳みそを取り出します。それを両手で優しく抱きしめ、繰り返し繰り返しキスをします。啄むような、小さく沢山なキスです。暫くすると僕の唾液で脳みそは蕩けて、口の中に流れていきます。そうなのです。ゴム製の幼女は唯一脳みそだけは本物なのです。僕と愛し合っていた時も、彼女は作られた躰ながら、物を考え、感情を発露し、そしてリビドーを感じていたのです。今僕の舌の上には、生命そのものがあります。思考の根源を咀嚼します。意識が喉を滑ります。完璧です。尊いです。理想的です。ゴムの死体は腐りませんし、僕を裏切ることもありません。唯一僕の支配下には無い脳みそさえも、今は僕の胃の中で揺蕩んでいます。何れは僕の血液の中を流れ全身に行き渡るでしょう。脳みそを全て吸い尽くした後、僕は残った幼女の材料で精液を搾りとって、ゴム製の皮膚にゴム製の臓物を詰めて縫い上げ、ゴム製の骨(不思議なことにゴムなのにとても硬い材質でできています)を骨組みにした一体の人形を作ります。彼女はとても美しいです。無駄の無い裸体です。痩せたフォルムが映えます。幼い繊細さは目を見張ります。僕はウットリしてしまって、涙を堪えることができませんでした。これを救済と呼ぶのだと知ったのは、僕が死刑台への階段を昇る前日に面会に来た、ゴム製の幼女の脳みそ部分のみの製造に立ち会った(簡単に言えば親と呼ばれる人種です)人間の後ろで恥ずかしそうに隠れていた彼女の妹の姿を見た時でした。僕は吼えました。遺伝子には神が宿るのです。次の機会には木製の幼女と愛し合いたいと願いつつ、僕は社会に絞殺されながらも、天使のように微笑むゴム製の幼女の元へと飛んでいくのでした。

 

 

「ラバー」