人は死病に罹る時
懐かしいほどの贅肉を
一つ一つと失っていく
それを誰かは美しいと語る
洗練されて穢れさえ削げると
しかし僕は贅肉を失った貴方が
そこに宿る大切な心の財産も
悉く奪われたのではと感じる
貴方の齧ったカカオ菓子や
告白をした夜の仔羊の肉や
何より二人の手料理たちが
全て貴方から失われていく
命の加算など知りはしないが
犠牲の勘定など意味もないが
この贅肉こそが貴方との軌跡で
貴方を確かめる数少ない現実で
貴方の魂の在処という信仰を
僕だけは信じていると叫びたいのだ
そして骨となった貴方に笑って
失礼ですよ、と叱ってほしい
「贅肉に宿るもの」