ライトポエムの最深部。


或いは美型詩の実験場。


詠み人知らず、作者不詳

そんな類の忘れ物に

僕が惹かれてしまうのは

幼く清く物知らぬ頃

母から聞いたお伽噺に

宿って離さぬ情念たちが

ある種のリアリズムを持って

或いは実在し得る亡霊のように

僕の胸に溶け残るからである

 

僕の言葉は僕に帰納するが

彼らの言葉は境界を持たない

僕の想いは僕が支配するが

彼らの想いは遍在している

罪も愛も夢も憎しみも

涙も雨も暑さも風も

全ては誰彼に平等に与えられ

それを経た時間の分だけ

手放し難くなっていく

忘られ難くなっていく

 

ああ、名もなき亡魂よ

僕の心に眠る美しき呪詛よ

現代の通信を駆け巡る

知見に及ばぬ囁きたちよ

今夜は寂しい僕だけの為

心での反芻を許しておくれ

貴方がたの灯火を想起して

また、その言葉が教えてくれる

本質的で核心的な人間性を

自分の言葉に確かめたいのだ

闇夜に電燈が必要なように

沈黙に愛情が必要なように

死してなお引力を持ち続ける

孤独でしなやかな置文たちよ

 

 

「詠み人に逢えずとも」