2014-03-29 ■ 老い耄れる時に姫君は 冷えた酸素を幾重に飲んで 体の内側から少しずつ しかし驚くほどに美しくなる 処女の血も皮も肉も骨も 食べ飽きたから手をつけず 純度の低い雨の匂いに 透き通る色を任せはしない たぐり寄せる思い出だけが 美の曲線を調律できる むせ返るほどの溜め息だけが 潤む囁きの開錠を赦す 一輪の薔薇は永遠に眠り 枯れ落ちてから言葉が残る 彼女は時と淫靡を捨て去る 無意味なまでに神秘な化け物 「芸術的なまでの姫君」