居ないものに焦がれ
視えないものに魅了され
聴こえないものを信じてた
僕の敗因は
現実と仲違いしたこと
手に触れぬ情念
鏡に映らぬ恋慕
空気を震わせる事の無い言葉
どれも意味がないと語る
あの人の悲しみを思い出す
敗北の痛みに戸惑うならば
まだ僕には信仰が足りない
今でも宇宙色の細胞は転移して
正常な世界への認識を損なわせるのに
だからこの「」を部屋の中に閉じこめて
電気を消して鍵をかける
そして僕が病理や不信に沈んだ日には
何度も扉を叩き続ける事で
真相の観測で「」が奪われていないか
涙で濡らすままに確かめるのだ
僕だけが感受し得る事は
どれだけの意味を与えるか
実存の無い認識こそが
僕の詩編に思慮をもたらす
「焦点」