失語症の山羊は
狼の胸で眠っていた
こぼれる吐息のその湿気には
確かな愛が語られていた
山羊は狼に食べられたいと願った
狼は山羊を食べるものかと決めた
山羊は夢見がちで
狼は名もなき詩人だった
禁じる告白のその情感には
全てが悲しい詩編であった
狼は山羊を食べたい欲求に負けるのが怖いのだと夜な夜な泣いた
山羊は狼に食べられた後の永遠を知るかのようにただただ笑った
首筋の歯型がとても熱くて
喉を鳴らす音が夜に響いて
絡める指は強かさを増して
それでも堪えず漏れ出す声に
初めて山羊は言葉を描いた
何より正しく単純な言葉
何より大切な確かな言葉
山羊は狼に
狼は山羊を
「山羊と狼の空白な五文字」