まだこれらは紙だ
まだこれらは布だ
まだこれらは音だ
まだ彼らは人だ
まだこれらは色だ
まだこれらは石だ
まだこれらは記号だ
まだ貴方は人だ
僕を取り巻く世の中と呼ばれるものは
実は世の中と呼ぶには忍びないただの他人の言い訳なのだ
僕が怯えているのはその中で定義された幾つもの言葉に
意味を付けて回る事により情感が死んでいく事だけなのだ
美しさや愛や心と呼ばれるものに
僕はどうしても気後れしてしまう
もしもその哲学を恐れず使えたならば
これ程までに満ち足りた恩恵はないはずだ
今、僕は僕と成す
今、彼らを他人と呼ぶ
今、貴方に恋人を望む
今、詩編が名前を寄り添う
「意味の産声」