夜更けの雨は美しけれど
大地に落ちると穢れを知ろう
貴方の病室のベッドの座標が
窓際なのはこの為なのか
健全という名の精神病よ
美し過ぎると死ぬには容易い
貴方に止まない雨は無くとも
止んだ後まで生きる道理は?
「病人ならば青白く佇み
咳を何度もしないとならぬ
弱音の一つも言わねばならぬ
カルテと仲違いしなければならぬ
林檎の兎を求めねばならぬ
そして陰無き笑顔は見せずに
隠喩を仄めかし怯えねばならぬ」
窓を叩いた雨の束の間の純潔で
目じりを濡らせど治らぬ病よ
貴方はせめて今夜のような
湿った暗がりで狂いたいと言う
「通り雨の病」