ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


昔はただただ偉大でした
月は多くあり、星は近く光り
空に朝も夜も区別なんてなかった
人は恋を言葉にする事無く愛し合い
ただ、そこに在る囁きに耳を傾け
そして乱れた息は絶える事がなかった


そこにいた僕は逞しさに欠けてはいたけれど
燃える炎に瞳は揺れて
鼓動の息吹が体を抱きしめていた
そして美しく軽やかに笑う貴方!
喉が渇くまで鳴き、お互いの姿を認めながら
一度たりとも命を見失う事などなかった


今はまだ昔を知らない
月はありし祈りを傾けられず、星はしかし光る
獣のままの空を皆全てだと信じている
人は愛する事を知ると言う術を覚え
時に見失った自らの神と対話しようと望み
そしてこんなにも不自由な体を持った


ここにいる僕は頼りなく情報体になり
詩を紡ぐだけの宝石に焦がれ
時に惨めに自らの体をバラバラにする
数多の言葉で泣き、そして貴方はいない
僕の空想に現れるのは幾重の恋人達であって
貴方がいない、貴方が足りない


偉大な過去に魘される僕は
いかなる感情の粗食も受け入れ
心強い今に生きる僕は
こんなにも脆く人を失う
しかし星は遠く光り
貴方を知らない僕が祈ります
失うものなどなかったの?
多くは全て今の生み出した不自由さ
泣いて喚くは赤子と恋人達
僕の思考は空中を知らぬと睨み
ただ熱情が果て、吐息が熱を帯びたら
何処までも囁きを繋ぎ止ようと
そして僕はまるでけものみたいに




「けだもの」