ウェヌスの暗号

韻を踏み過ぎてパーに成った。

芸術幼女言語の最深部。


或いは美型詩の実験場。


優しいあの子が死んでしまったよ
あの子が死んでしまったよ!
何で? どうして?
わからないわからない、わからない!
優しかったのに死んでしまったんだよ
あの子はきっと殺された。
誰に? どうして?
わからないわからない、わからない!


この世の中のとにかく厳しく冷たく意地悪で無機質で不誠実な
そんなくだらない、くだらないことで
あの子は死んでしまったならば
僕は許さない! 全てを許すことなど出来ない!
スポットライトに当たった彼女を少しでも辱め蹂躙しあまつさえ笑った
そんな腐った、反吐の出ることならば
あの子は死ぬ必要なんてなかったはずだ!
何故殺した? 誰が殺した?
何故あの子は死ななければいけなかったのだ!
もしもこれが現実ならばいっそもっと醜ければよかった
もしもこれが実情ならばいっそ過剰に難解であればよかったのだ!
僕はちっとも優しくないけれど
あの子は優しかったのだ
僕は全くの役立たずだけれども
あの子はよく笑う彼女なのだ


優しいあの子は死んでしまったんだよ
誰のせいでもなく、しかし全てがカッターに代わり
あの子をずたずたに切り裂いてしまったのだ!
僕は許さない! 実情を許さない
あの子は死んでしまったんだ
あの子は殺されてしまったんだ
事実に、状態に、僕に、彼らに
あの子は殺された!
止めて下さい傷つけるのは
止めて下さい、もう
もう
月を一緒に見ることも出来ない
僕が先に死ぬことも出来ない
いっそ死んでしまえの裏切りと
死んでしまいたいと言う誰彼に
泡になった言葉を僕は根こそぎ手のひらで潰す中で
優しさを殺す錆びた凶器をぬぐえず抱きしめて
優しいあの子は死んでしまった
ああ、約束も果たせず
答えも見つからぬまま
寄り添えぬまま
ただの一度もその優しさに気付き抱きしめる人も居ないまま
ああ、ああ、僕の
僕はあの優しさだけを
僕は!
「ああ、うわああ」
「うわああ、ああ」
「ああ! ああああ! うわあああ!」




「優しいあの子が死んでしまった」