屑肉の木は
貧困に実り
健気な虎が
忙しく齧る
僕の遺骨は
夢を磨かず
雨音みたく
深淵で鳴る
黄金の血は
贅沢に廻り
偉大な豚が
麗しく搾る
神の奇蹟は
恥を歩まず
星空みたく
遠景で散る
「家畜聖典」
芸術幼女言語の最深部。
或いは美型詩の実験場。
縄師が縛る
罪なる躯は
肉の極点を
熱烈に謳う
高揚の汗に
泪が滲んで
自在感じる
真理を導く
胎児が実る
幸なる心は
生の宿縁を
温厚に示す
平穏の裡に
命が響いて
奇蹟信じる
愚盲を嗜む
「女たる万有」
悲愴な失恋に
神を賛美する
愛しい傷痕は
泪雨が調和し
厚い処方箋は
屋上で燃えて
僕の重複癖を
一途に禁じた
苦難な混濁に
君を懐古する
正しい足枷は
物語が意匠し
淡い夜光蝶は
終焉で魅せて
僕の対称性を
無口に詠じた
「薄倖の祝福」
神童が護る
惨い定義を
夜の砂場に
封印すれば
僕は回顧を
正しく紡ぎ
悲痛な色も
静観できる
廃人が縋る
脆い自覚を
雨の線路に
散骨すれど
僕は暗示を
空しく択び
錯誤な音も
識別できぬ
「存在時計」
純潔の作詩で
僕は仮想する
耽美な予言が
恥を纏わずに
夏服が舞えば
夢見るは吐息
初恋の閃光を
一途に詠んだ
同情の講義で
君は自殺する
禁忌な依存が
幕を下さずに
先生が死せど
裏切るは国語
亡魂の解読を
緻密に説いた
「女子の文法」
密画は触る
僕の静謐に
病が燃える
実存を顕し
聖母の肌が
色艶を囁き
燈る詩眼は
高揚に佇む
遺稿は悟る
君の深遠に
泪が魅せる
面影を敬い
悲愛の熱が
言霊を育み
薫る絵筆は
耽溺に肯く
「切なる齟齬」